ソラミミ堂

  • 2017年11月22日

    邂逅するソラミミ堂 31 「株価」のはなし

    イラスト 上田三佳  県庁前の電光掲示板には、琵琶湖の水位や気温、溶存酸素の濃度などが逐次表示されているのです。と他府県の人に話すと「滋賀県民はどれだけ琵琶湖が好きなのですか!?」と感嘆されてしまった。  好きよりなにより、毎日の、健康チェックのようなもの。ほら、毎日欠かさず体重計にのったり、基礎体温や血圧を... 続きを読む

  • 2017年9月14日

    邂逅するソラミミ堂30 月が指にとまる

    イラスト 上田てる葉  龍樹菩薩が説いたとされる「指月の譬え」というのがある。 人の指を以って月を指し、以って惑者に示すに、惑者は指を視て、月を視ず。人、これに語りて、「われは指を以って月を指し、汝をしてこれを知らしめんとするに、汝は何んが指を看て、月を視ざる」  「指」を「言葉」あるいは「方法」に、「月... 続きを読む

  • 2017年7月13日

    邂逅するソラミミ堂29 きずはつくる

    イラスト 上田三佳 「造」という字のとなりか上か、そのどちらかに居るときの「創」という字はすなわち「つくる」という意味である。  ところでこの字は「絆創膏」の三字の中に置かれると、すなわち「きず」という意味になる。  「つくる」は「きず」だと気がつくまでにうっかり今までかかってしまった。  大工でもある友人M... 続きを読む

  • 2017年5月19日

    邂逅するソラミミ堂28 父の膝に座った

    イラスト 上田三佳  東京へ出かける用事があって、ちょっと時間があるようなら、上野へ足を運びたい。というよりも、近江から来て上野の近くにいるならば、立ち寄らないでは済ませられない「家」がある。  不忍池のほとりなるその「家」、「びわ湖長浜 KANNON-HOUSE(カンノンハウス)」は、上野駅にほど近いビルの... 続きを読む

  • 2017年3月22日

    邂逅するソラミミ堂27 明日はあふみ

    イラスト 上田三佳  よばれた気がしてさがしてみたら、いた、いた、ここに、道ばたに。  来たよ、ことしも。はるだよ。  と、かわいいこどもの学芸会がはじまるように、つくしが出できて、幕があく。  いちねんまえ。その幕あけを待たずして、友が病で亡くなった。  あの日もつくしによび止められて、そうだ、こいつを摘ん... 続きを読む

  • 2016年12月30日

    邂逅するソラミミ堂26 鐘をうまそうにきく

    イラスト 上田三佳  「あたり」「おし」「おくり」と聞いてピンとくる人は、世間にどれくらい居るのだろうか。  やかましいから鳴らしてくれるな、と近隣から苦情が出るので取りやめになった。という話が聞かれるようなご時世だから、ずいぶん少ないんだと思う。迂闊にも僕は知らないでいた。  寺院の鐘の音のことである。  ... 続きを読む

  • 2016年11月25日

    邂逅するソラミミ堂25 朝に鳥を埋める

    イラスト 上田三佳  猫のまめは我が家族の一員と言いながら、家猫にはなりきらないで、食事と寝るときのほか、目覚めている時間のほとんどを外で過ごしている。外でも大半は寝ているのかもしれない。  気性は穏やかで近所の腕白お転婆たちにまめまめといって取り囲まれ撫で回されたり不覚にも抱き上げられたりした場合でも決して... 続きを読む

  • 2016年9月22日

    邂逅するソラミミ堂24 もう、また来るは来ない

     現を抜かすのは難しい。  夢と現の追いかけっこであるわが人生は、いよいよ折り返し地点に差しかかった。  このまま現に抜き去られるか、夢は現を抜かせるか。そんなことを思う歳になった。  その洗礼というわけでもなかろうが、年改まってからこのかた、尊敬し敬愛する師友との死別が立て続けにあった。  そこへ肉親の死に追い... 続きを読む

  • 2016年7月22日

    邂逅するソラミミ堂23 海賊王たちの石ころ

    作品 上田三佳  まちのたからものを見つける方法について話して欲しい、と言われて、どんな話をしようかと考えていたら、娘らと浜辺を歩いた日の出来事が頭に浮かんだ。あの日は一緒に石ころをひろって遊んだのだった。  それで思いついて「たからものをみつける方法をみんなは知りたがるけれど、みつけたものをたからものにする... 続きを読む

  • 2016年5月14日

    邂逅するソラミミ堂22 不思議なジョーロ

    イラスト 上田三佳  はるか西方に天変地異を目の当たりにした折からの日曜日に、ある瞑想の会に参加した。おおきな窓からひろびろと美しい西の湖を臨む絶好の会場であった。  その日天候はめまぐるしく推移し、それに呼応するように湖面は、一日のうちにまこと劇的に表情を変えた。はげしくさんざめく心、ひたむきに同朋の無事を... 続きを読む

  • 2016年4月6日

    邂逅するソラミミ堂 21 ブジネスチャンスがきた

    イラスト 上田三佳  新社会人たちにならって、ひとつ誓いを立ててみた。  よし、きめた。俺はこれから立派なブジネスマンになる!  なんだいさっそく誤植じゃないか。おいおい駄洒落かまじめにやれ! と叱られそうだが、本人いたって真面目なのである。  「BUSINESS(ビジネス)」よりまず「BUJINESS(ブジ... 続きを読む

  • 2016年3月8日

    邂逅するソラミミ堂20 カエル号で買える

    イラスト 上田三佳  カエル号は余呉のむらむらのおばあちゃんたちにとって小さなオアシスだ。このオアシスは、こちらが探して歩かなくても、向こうから訪ねて来てくれる。  カエル号は、軽トラックに日用品や食料品や、行く先々で仕入れた新鮮なうわさ話を満載して、きょうはここ、あしたはここ、と、むらからむらへ売りまわる、... 続きを読む

  • 2016年2月10日

    邂逅するソラミミ堂19 余生を「贈る」

    イラスト 上田三佳  先日子育てについて語り合う会に参加した。  子育てにそんなに熱心だったっけ?  白状すると、わが子が産まれたその瞬間から、僕の育児は、半分「余生」の仕事なのです。  わが子が産まれて、はじめて腕に抱いたとき、名状しがたい感慨がこみあげてきた。自分も人の親になる。さあこれからだ。  「始ま... 続きを読む

  • 2016年1月6日

    邂逅するソラミミ堂18 目に目を付ける

    イラスト 上田三佳  あの魚が水中の「猛禽類」だとは、思ってもみなかったけれど、言われてみれば、なるほどそんな風貌をしている。気高くて、精悍な面構え。  「ビワマスの目が好きなんや」。  と正吉さんは言った。  「鷲や鷹と同じ目をしているから」。  鷲鷹は天空数百メートルの高みにあってもその鋭い目でネズミのよ... 続きを読む

  • 2015年12月9日

    邂逅するソラミミ堂17 不思議の川

    イラスト 上田三佳  芹川はとても近いので、七つになる娘とでも散歩で行ける。  そろそろ雨になりそうだから、ちょっと散歩に行こうか、芹川まで。と言って誘い出した。  今日の散歩は、気持ちよく晴れていてはいけないのです。  アメノウオが、さんらんのために、びわこからそじょうしているかどうか、たしかめにいってみるこ... 続きを読む

  • 2015年11月4日

    邂逅するソラミミ堂15 空の底をおよぐ

    イラスト 上田三佳  金木犀がかおる道は、歩くというよりも、魚の類になって空の底をおよいでいる。  家ごとの庭の趣向や木の分布にもよろうが、またわずかな地形のちがいによっても香気に濃淡が生じる。四方から落ち合って流れ込み、澱のように沈殿するかおりの淵のような場所がところどころにある。うっかりはまると香気にまか... 続きを読む

  • 2015年10月7日

    邂逅するソラミミ堂14 無事というワザ

    作品 上田三佳  学生が一人、ある土地の暮らしについて学ぶために、住民一人ひとりから話を聞いて歩いている。先日、「こんなことを教えてもらった」としらせてくれた。  そのときは、暮らしを知るとはどういうことか、自分は本当に地域のことを分かっているか自問していた。そんな悩みを漏らしたところ、その人はこういう話をし... 続きを読む