レキジョのための基礎知識 1
石田町を歩こう!
長浜市石田町
今、10代から20代の若い女性を中心に、戦国時代が一大ブームである。
長浜市石田町を訪ねたときのことだ。石田町は関ヶ原の合戦で、西軍を率いた戦国武将・石田三成の出生地として知られている。カメラを片手に独り、路地裏や山裾の長閑な風景を散策していたら、農作業をしていた地元の人に声をかけられた。
「どちらから来られたのですか?」
彦根からですと応えると、「ああ、それは近いですね」と少し意外そうだった。その後、町内の別の場所でも同じようなやり取りがあった。どうやら、近隣の市から、しかも男一人で観光に訪れるのは石田町では稀なケースであるらしい。ここ数年、石田町を訪れるのは、県外からの若い女性が中心であるそうだ。
彼女たちは、戦国時代、特に石田三成のファンで、その縁の地をめぐるために、東北から九州まで、およそ日本中から石田町を目指して集まって来ているのだという。
「レキジョ」という言葉がある。漢字では「歴女」と書く。歴史が好きな女性たちを指す言葉だ。大河ドラマや歴史小説、マンガやゲームなどから歴史に関心を持ち、特定の武将にまつわるエピソードから深く掘り下げていくのがレキジョの嗜みである。
石田三成公事蹟顕彰会の木下茂昭理事長にお話を伺ってみた。
「最近は、顕彰会が簡単な展示をしている石田会館に来られる人も9割以上が若い女性です。三成さんを好きな人たちは、ここと彦根の佐和山、関ヶ原を巡るのがお決まりのコースだそうで、なかには、インターネットで知り合い、長浜駅で初めて顔を合わせたというグループもおられました。三成さんは、戦国時代には珍しく、友情や信念を第一に考えていた人だったそうです。命を賭して義に殉じた西軍武将のドラマは、天下取りばかりが強調された東軍より好まれているのかもしれませんね。町内には、関ヶ原の合戦で石田三成と関係の強かった武将の名前とエピソードを説明した街灯が14基建っています。三成さんについてより深く知ることができると、休日にはそれを巡っている女性も多く見かけるようになりましたよ」。
木下さんに教えていただいたので、僕もそれに倣ってみた。街灯には、三成の家族や忠臣、盟友たちについて簡単に紹介がしてある。1時間半ほどかけて14基全部を周った。義を重んじ、やがて敗れていった武将たちのドラマは、カッコいい。
戦国時代ブームの足がかりとして、まずは石田町から始めてみるのはどうだろう。その時は、是非、石田三成のドラマを追いかけてみるといい。路地裏や山裾の日常風景を、歴史ドラマの舞台へ変換する、“レキジョのススメ”である。
石田会館(石田三成公事蹟顕彰会事務局)
滋賀県長浜市石田町576 / TEL: 0749-62-8285 / 不定休
石田会館の閉館時は、石田三成公事蹟顕彰会理事長 木下茂昭さんのご自宅に連絡すれば開けていただけることもある(TEL: 0749-62-0046)。
店舗等の情報は取材時のものですので、お訪ねになる前にご確認ください。
【木屋凧】