夏は三口屋

三口屋菓子玩具卸店

このエントリーをはてなブックマークに追加 地域: 彦根市 2009年6月28日更新

倉庫を改装した店内

 夏といえば、駄菓子屋である。気温と湿度が高くなるにつれ、駄菓子屋熱も高くなる。
 毎年、誰から言い出すでもなく自転車で近くの店に乗りつけ、握り締めた小銭で最初に瓶の炭酸ジュースを買う。ジュースの冷蔵庫に栓抜きがぶら下げてあって、セルフサービスで王冠を開け、店先で喉を冷やしながら、今日はこれから何をして遊ぼうかと仲間と漠然と思案する……。カラフルなゼリーや、オマケや当たりくじのついた菓子が妙に美味しかった。僕は、串に刺さった小さなイカが好きで、よくプラスチックの筒から一本だけ選んでいたのを覚えている。忘れられない夏の思い出だ。
 僕は広島出身で、その店が今あるかどうか判らないけれど、彦根市高宮町の駄菓子と玩具の卸販売の店「三口屋(みくちや)」は、倉庫を改装し、新旧入り乱れた駄菓子や玩具が所狭しと並べられ、当時を思い出すには十分だった。

店主の川口太一さん

 普通の駄菓子屋にあるものなら、たいていは揃っていて、しかも、問屋価格なので格段に安い。小学校の遠足や地域の地蔵盆など、何度となく利用した人は多いだろう。
 「三口屋」の歴史は江戸時代に遡る。彦根城下町にあった砂糖菓子店にルーツがある。玩具店を経て、現在の場所で営業を始めてから42年目になるそうだ。以来、ずっと湖東湖北の駄菓子のメッカとして親しまれている。
 「当初から、ほとんど形を変えることなく続けてきました。今では、3世代に渡って買い物に来てくださるお客さんや外国の方も多いんですよ」。
 開業時からお店を切り盛りする川口太一さん(65)に教えていただいた。
 店内を歩くと、あのゼリーや麩菓子など、懐かしい顔ぶれをすぐに見つけることができた。今でも現役なのが嬉しい。現在の子ども達に人気なのは、グミやガムだそうだ。
 「有名なスナック菓子などは家に買ってあったりしますから、ここでは自分の好みでないと買わないお菓子を選ぶようです。昔と違うのは、小銭ではなくてお札で買い物をする子が増えたことでしょうか。1000円札で9円のガム一個とか、よくいますよ」。

どれにしようか迷ってしまう

 「三口屋」にはグミだけで約40種類が常時、揃えられている。その日の気分にぴったりの駄菓子を持って行くと、川口さんがそろばんで勘定する。その光景は今も昔も変わらない。
 玩具コーナーには水鉄砲や風船、水笛、万華鏡などが取りそろえられ、金魚すくいの網のセットも売られていた。毎年、7月初旬からは、花火コーナーが大幅に増設されるという。
 僕は、あの串に刺さった小さなイカをこの日の一個に決めた。大人になったので、一本だけとはいわず、プラスチックの筒ごとである。俗に言う「大人買い」である。実は、あの頃からの夢だったのだ。晩酌が進んだのは言うまでもない。新たに上書きされた、駄菓子屋と僕の夏の思い出である。

三口屋菓子玩具卸店

彦根市高宮町1320-8
TEL&FAX: 0749-22-7956
営業時間 9:00〜18:30 / 無休(正月のみ休み)

店舗等の情報は取材時のものですので、お訪ねになる前にご確認ください。

F・B

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