漆文化をひろめたい

塗師・箔押師 中川喜裕さん

このエントリーをはてなブックマークに追加 地域: 2021年12月2日更新

工房にて


 「そんな手仕事があることを知らなかった」「どうすれば応援できますか……?」
 カネイ中川仏壇5代目で塗師・箔押師の中川喜裕さん(31)は、昨年11月、SNSで「木製品ならなんでも無料で漆を塗ります」と投稿、木製食器やナイフの柄、大きなものではテレビボードなど90点程の依頼品を半年かけて仕上げた。伝統工芸の技も知って欲しいと仕上げる工程もストーリーズにアップ。依頼者や依頼者の知り合いから届いた感想が冒頭のセリフである。中川さんは「若い世代は漆を知らない人が殆ど」と言う。
 漆は、ウルシ科の落葉高木・ウルシの樹液から作られる天然樹脂塗料で、接着剤としても使われ、縄文時代の遺跡からの出土品もあるほどの歴史を持つ。英語の「Japan」は漆や漆器をさすこともある。熱や水に強く、抗菌性もある。美しいツヤ、手に取った者にしかわからない感触も魅力的だ。そんな漆文化を広めたいと中川さんは奮闘中なのである。
 中川さんはお父様と一緒に仏壇店を営むなか、2020年、長浜曳山祭りの曳山の修復の仕事に携わった。先輩職人から伝統技術などを学ぶとともに、先輩職人がフェイスブックやブログなど、ありとあらゆる方法で漆についての発信をしていることを知る。「発信しなければ職人としての存在はないのと一緒」と言うその人に刺激を受け、自分なりの方法で漆文化を発信しようと、まず始めたのが無料プロジェクトだった。
 中川さんの趣味はアウトドア。ナイフや斧の柄、テーブル、木製のぐい飲みなどのキャンプ用品に漆塗りを施して楽しんできた。水や熱に強く、抗菌性もある漆はアウトドアにはピッタリだ。更に長く使い続けるほどに味が出て、傷ついたり割れたりしても修復が可能である。モノを永く大切に使い続けたい人にはおススメのコーティング剤なのだ。
 無料プロジェクトをきっかけにアウトドアで師匠と仰ぐことになる人との出会いもあり、今年4月、漆塗りを施したオリジナルアウトドア用品を販売するブランド「GNU(ヌー)」を立ち上げた。11月、買った人が漆塗りにチャレンジできる「GNU URUSHI KIT tamate-bako」が完成。輪島で作られた木製のお弁当箱にチューブ入りの漆、テレピン油、手袋、アームカバーなどと丁寧な解説書がセットされている。

漆を施したククサ

 漆はかぶれるとか、扱いが難しいと思いがちだが、解説書を読むと誤解が多いこともわかる。漆を乾燥させる漆室(うるしむろ)は段ボールを使った作り方も紹介。「漆室を開けるときの感動をぜひ味わってほしい」と中川さんは目を輝かせる。本当に漆の素晴らしさ、漆塗りの奥深さをみんなに知って欲しくてしょうがないという風だ。
 これまでに数回開催した「tamate-bako」やフィンランドの木製マグカップ「ククサ」を作り漆塗りを施すワークショップは盛況で、県外からもワークショップ開催の声がかかるようになった。アウトドアに限らず人とのつながりもどんどん増えはじめている。そのことを「お陰様で」とか「ありがたいこと」と喜ぶ中川さんは、「家の中に手を合わせる仏壇があることは大切」とも話された。
 伝統はイノベーションの連続であるという言葉を思いだす。「どうすれば応援できますか……?」
 まずは使ってみることだろう。実は「応援するのではない」。中川さんに「応援していただいているのである」。それは「ありがたいこと」なのである。そしてそれは自分自身の暮らしのイノベーションなのだ。伝統の技を伝えてくれる人がいる。「ありがたいこと」である。

発売されたキット「GNU URUSHI KIT tamate-bako」

市販のアウトドア用品に漆塗りを施している

キットで漆塗りをするとこんな感じ

カネイ中川仏壇

滋賀県長浜市曽根町1315
TEL: 0749-72-8115 / FAX: 0749-72-8617
https://kaneinakagawa.com

店舗等の情報は取材時のものですので、お訪ねになる前にご確認ください。

椰子

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