コロナ禍でのスタート
コロボックルのパン屋さん
ともゑ庵2階のカフェ
「お台処 ともゑ庵」の2階でお茶をしようと誘われ、カフェを訪れたのは、今年6月最後の日曜日だった。
昭和9年に建てられたという民家を改装したワンフロアーの店内は、三方のレトロなガラス窓のせいか、樹々越しにみえる伊吹山や町なみが穏やかで、明るく解放感にあふれていた。
カフェの主は彦根市に住む山崎春美さん・眞理子さんご夫妻。家は眞理子さんの祖父が建て、ここ10年ほどは空き家になっていたそうだ。
1階テナント「お台処 ともゑ庵」は2021年4月にオープンしたお食事処である。ともゑ庵のお客様に食後のコーヒーを提供したいとご夫妻がはじめたのがカフェだ。食後のお客様には100円引きで提供している(カフェのみの利用も可)。香り高い珈琲を飲みながら、「来月あたりからここでパンの販売をはじめます」とお聞きした。
ともゑ庵2階、再び
10月……、開店に合わせて訪れると、すぐにお客さんがやって来た。「地元です」というお客さんは、もともとはご飯党だけれど、週に1回、ここのパンを食べるのを楽しみに通っているそうだ。
「パンの焼き時間を少しかえてみたのですが」と春美さんが話しはじめると、「私はもっちりした方が好き」とか「具材の量はちょうどいいんじゃないかな」などと、お客さんとご夫妻はパンの話で盛り上がった。
本当に「ともゑ庵の2階」でパンの販売がはじまったのだ。名前は「コロボックルのパン屋さん」という。
コロナ禍でのスタート
春美さんがパンを焼きはじめたのは2020年2月以降、コロナ禍で在宅時間が増えたためだ。針金細工や木工も楽しんだが、眞理子さんがはじめたパン作りにハマった。
2回目の段階で「口を出さず、好きにやらせて」と春美さんが言ったそうだ。発酵が思うようにならないことなどに面白さを感じ、発酵器を手作りするほどに没頭していった。
食パンを焼いては、親戚や友人などに配ると、「おいしい!」と皆に喜ばれ、今年7月、販売用のパンの製造をはじめた。
毎週土曜日の午後は仕込み作業と試作品づくり、日曜日は早朝4時頃に作業をはじめる。作るのはブリオッシュ系丸パンとミニ食パンの2種類で、それぞれプレーンとレーズンやチーズなどを入れたものが数種類ずつある。
ご夫妻は「国内産小麦粉を使用し、材料と自然な風味を大切にしている」と言う。
春美さんは「いつかは天然酵母を作るところからはじめたいです。パン作りに到達点はないですね」とゴールがみえないことと、眞理子さんと二人であれこれ考えながらの作業を楽しんでおられる。
カフェは、ご夫妻にとって二人で過ごすとっておきの場所なのである。仲の良さがパンの風味を増しているに違いない。
コロナ禍に生まれた可愛らしいパンは、ともゑ庵2階のカフェに並んでいる。
コロボックルのパン屋さん
長浜市国友町571 「ともゑ庵」2階
TEL: 090-5646-7918
カフェ:日曜日と水曜日 午前11時~午後3時30分
パン販売:日曜日 売り切れ次第終了
ホットコーヒー(クッキー付き) 400円 / ミニ食パン…プレーン130円、レーズン・クランベリーなど150円 / ブリオッシュ系丸パン…プレーン70円、クランベリー&チーズ、レーズン&クルミなど90円
店舗等の情報は取材時のものですので、お訪ねになる前にご確認ください。
【蜻蛉】