淡海の妖怪

  • 2021年11月3日

    坂上田村麻呂編2「大嶽丸」

    善勝寺墓地。方形の大きな岩が首塚だと伝わっている。  坂上田村麻呂(さかのうえのたむらまろ・758〜811)は、桓武天皇に重用され数多くの伝説・物語を残した人物だ。世界遺産「古都京都の文化財」の構成資産のひとつである清水寺は、田村麻呂が十一面千手観世音菩薩を本尊として寺院を建立し、音羽の瀧の清らかさにちなんで... 続きを読む

  • 2021年10月4日

    古知古知相撲と八岐大蛇

    古知古知相撲  9月9日、重陽の節句。古来中国では、奇数は縁起がよい「陽数」と考えていた。陽数の最大値「9」が重なるので「重陽」という。この日、多賀大社では一年の豊年満作を感謝する秋祭り「古例祭」が行われ、豊凶を占う「古知古知相撲」の三番勝負は祭りの見所のひとつである。  「古例祭」は昨年はコロナ禍で中止とな... 続きを読む

  • 2021年8月28日
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    かわうそ

     琵琶湖の沖島には漁師に悪戯をするかわうその話が伝わっている。  小糸漁は真夜中に船を出し、朝方網をあげるので猟師は一晩を船上で過ごす。真夜中に船を出すため、昔は寝過ごさないよう「起こし番」というのがあった。起こし番は「イコケーイコケー」と仲間を起こして回るのだ。ある晩、「イコケーイコケー」の声が聞こえた。仲間の船まで... 続きを読む

  • 2021年7月6日
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    滅鬼の一族

    調宮神社の林にある奇岩  以前、長浜市の「メタテカイ(目検枷)」という犬の話をしたことがある。  毎年、湖上の祭神(怪物)に平方の村から人身御供として娘を差し出す習わしがあった。ある男が、怪物が「メッキに言うなよ、メッキに言うなよ」とつぶやきながら現れることを知り、メッキが何者かと尋ね回り、野瀬の長者の愛犬「... 続きを読む

  • 2021年3月30日
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    明治の英国人 リチャード・ゴードン・スミス

     『日本の昔話と伝説』(『An-cient Tales and Folklore of Japan』)に登場する「淡海の妖怪」の話である。著者リチャード・ゴードン・スミスは、明治31年(1898)12月、長崎に到着し8年余りを日本で過ごしたイギリス人である。大英博物館から正式の委嘱状を得て、日本政府の許可のもと博物館資... 続きを読む

  • 2021年3月11日
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    蜘蛛ノ火・死んだ明智の蜘蛛火

     昨年6月、『伊吹山文化資料館(米原市春照)の髙橋順之さんからメールをいただいた。「資料館で牧野富太郎に関する企画展をしています。その展示資料の江戸時代の文献に伊吹山の『蜘蛛ノ火』についての記載があります」というものだった。「蜘蛛ノ火」については来月記すことにする』と書いた。蜻蛉さんの「伊吹山文化資料館へGO!」の原稿... 続きを読む

  • 2021年2月3日
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    太郎坊天狗・其の一

     アニメ名探偵コナン52「霧天狗殺人事件」で、コナン君が天狗について「もともとは大昔、雷のような大きな音をたてた流れ星のことを中国から来た人が天の狗(いぬ)、天狗だって言ったのが始まりなんだって。中国ではこうした星が落ちるのは不吉の兆しだっていわれていて、それが日本にも伝えられ、天狗は怪しげな現象から、怪しい技をなす妖... 続きを読む

  • 2020年11月24日

    妖怪退治とご先祖・下「水犀」

    春日神社 春祭り(オコナイ)の神饌(© Masaki Sugihara)  三上山の百足退治や平将門討伐で知られる藤原秀郷(俵藤太)を始祖に仰ぐ武家は多い。妖怪や怨霊退治の英雄をご先祖にというのはよくある話なのかもしれないと、「妖怪退治とご先祖・上」で書いた。今回は水犀(すいさい:東近江市)を退治し... 続きを読む

  • 2020年11月17日
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    妖怪退治とご先祖・上

     10月14日、彦根商工会議所が主催する彦根ヒストリア講座の「蒲生氏郷の章」に参加した。氏郷(1556~1595)は、近江日野出身の戦国武将である。祖父は蒲生定秀、父は蒲生賢秀、近江守護六角氏の重臣だった。あまり注目してこなかったので興味深かった。そのなかでも「藤原秀郷(俵藤太)の子孫とされ、龍神が秀郷に贈った十品のう... 続きを読む

  • 2020年10月6日
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    「蚊の精」と「蛟(みずち)」 2

     『中仙道守山宿』(宇野宗佑著、青蛙房)の「蚊と蛟」に、猫面蛇身の怪蛇の記述があった。寛保・安永(1741〜1779)の頃の学者・宇野醴泉が村人から聞いた話という。  「安永四年乙未(きのとひつじ)の夏、六月二十六日、近江国野洲郡石田村溝渠中ニ物有リテ半身ヲ出ス、猫面蛇身(びょうめんじゃしん)、耳有リ、髭有リテ角(つの... 続きを読む

  • 2020年9月10日
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    「蚊の精」と「蛟(みずち)」 1

     夏は蚊の季節である。今年はコロナ禍と酷暑でクーラーをかけた部屋で巣籠もりという塩梅だから、例年に比べると虫刺されの薬の世話になることも少ないように思う。  狂言『蚊相撲』に登場する「蚊の精」は江州守山出身、立派な淡海の妖怪である。アニメ『犬夜叉』(高橋留美子作)に登場する、蚤の妖怪「冥加」のように危険が迫ると真っ先に... 続きを読む

  • 2020年8月12日

    クサビラ神

     「くさびら」とはキノコのことだ。漢字で「菌」或いは「茸」と書く。  栗東市中沢に全国唯一「菌」の名を戴く神社があり、御朱印にはキノコがデザインされている。『妖怪・土俗神』(水木しげる著/PHP研究所)に「クサビラ神」として菌神社の話が載っている。 舒明天皇の六三〇年ころ、このあたりにひどい飢饉があり、人々... 続きを読む

  • 2020年7月2日

    ガワタにトッコを抜かれてはたまらん!!

    伊吹山文化資料館で展示されている天然記念物イヌワシの幼鳥の剝製 イヌワシと天狗  一年ほど前、伊吹山文化資料館(米原市春照)の髙橋順之さんからメールをいただいた。「資料館で牧野富太郎に関する企画展をしています。その展示資料の江戸時代の文献に伊吹山の『蜘蛛ノ火』についての記載があります」というものだった。「蜘... 続きを読む

  • 2020年5月25日
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    デンダイドのミステリー

     ここのところ河童について調べることが多い。調べるといっても資料を眺めているだけなのだが、わからないことばかりだ。妖怪は「妖」しい、「怪」しいものだから仕方ない。旧東浅井郡びわ町の河童の昔話に解けないミステリーがあった。  下八木の南西に「デンダイド」という大きな沼があった。沼のそばに「デンダ」という爺さんが住んでいた... 続きを読む

  • 2020年5月5日

    新型コロナウイルスと妖怪

    アマビエを描いてみた アマビエはアマビコ  「アマビエ」という妖怪が新型コロナウイルスの感染拡大とともに話題になっている。実はアマビエの名はアマビコが正しい。『明治妖怪新聞』(湯本豪一編)は、近代化が推し進められた明治時代に新聞紙上を賑わせた妖怪や怪奇譚を集めた書籍だ。アマビエについて記されている。 〝肥後の... 続きを読む

  • 2020年4月6日
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    皿のない河太郎(河童)

     春が訪れると、頭をよぎる妖怪がいる。『高橋敬吉 彦根藩士族の歳時記』(藤野滋編・サンライズ出版)に記されている「河太郎」だ。  彦根城の琵琶湖側、観音堂筋(馬場1丁目)は彦根藩士たちが暮らしていたところだ。子どもたちは春、水が温む頃、堀で魚釣りを始める(現在は堀での魚釣りは禁止)。当時の堀は深く、はまったら「どちや河... 続きを読む

  • 2020年3月5日
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    竹やぶ老人 — 山東町

     旧・山東町の伝説を集めた『続・山東昔ばなし』に「竹やぶ老人」が収録されている。妖怪としてではないが、妖怪っぽいので紹介しておくことにする。こんな話である。  むかし、山東町内の路上で、白髪が肩よりも長く、杖を手にした見知らぬ老人の姿がたびたび目撃されたことがあった。その眼光は鋭く、人の心の内側まで見通すようだった。そ... 続きを読む