淡海の妖怪

クサビラ神

このエントリーをはてなブックマークに追加 地域: 彦根市 2020年8月12日更新

 「くさびら」とはキノコのことだ。漢字で「菌」或いは「茸」と書く。
 栗東市中沢に全国唯一「菌」の名を戴く神社があり、御朱印にはキノコがデザインされている。『妖怪・土俗神』(水木しげる著/PHP研究所)に「クサビラ神」として菌神社の話が載っている。

舒明天皇の六三〇年ころ、このあたりにひどい飢饉があり、人々は餓死寸前の状態に追いこまれた。そのとき、森やその周辺一帯に、それまではなかったキノコが大発生した。近隣の人々は、このキノコを食べることで、餓死の難からまぬがれることができたのである。

 当時の人々がキノコの大発生を神意の顕れであるとして感謝し、安寧を願いこの場所を神域としたのである。残念ながら、クサビラ神について具体的な言及はない。
 ところで、狂言の演目「くさびら」は、屋敷に得体の知れないキノコが生え、何度とっても生えてくる。山伏に退治を依頼するのだが祈祷の威力なく、消えるどころかキノコはどんどん増え、ついに動きはじめる……。
 実際、昨日まで何もなかったところにキノコを目撃することはよくある。美味・薬効・幻覚……、食べると死に至らしめるものもある。姿形や色も多種多様、コスチュームを纏うものもあり、キノコは不思議極まりない妖しい生き物である。
 7月中旬、彦根市立図書館と滋賀県立図書館でキノコがたくさん生えているのを見て、妖怪「クサビラ」を思い出した。確かに、妖怪っぽいのである。

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