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淡海の妖怪

太郎坊天狗・其の一

このエントリーをはてなブックマークに追加 地域: 東近江市 2021年2月3日更新

 アニメ名探偵コナン52「霧天狗殺人事件」で、コナン君が天狗について「もともとは大昔、雷のような大きな音をたてた流れ星のことを中国から来た人が天の狗(いぬ)、天狗だって言ったのが始まりなんだって。中国ではこうした星が落ちるのは不吉の兆しだっていわれていて、それが日本にも伝えられ、天狗は怪しげな現象から、怪しい技をなす妖怪として認識されていたみたいだよ」と説明している。勿論、真実は一つ! しかし、そうはいかないのが妖怪だ。
 山に棲み、神通力でさまざまな怪異を起こすのが天狗である。その他、霊峰・名山には必ず天狗の伝承が残っている。愛宕山太郎坊、比良山次郎坊、鞍馬山僧正坊、比叡山法性坊、横川覚海坊、富士山陀羅尼坊、日光山東光坊、羽黒山金光坊など、日本の48の霊山にそれぞれ天狗が棲んでいる。『天狗経』に記された四十八天狗である。比良山次郎坊、比叡山法性坊、横川覚海坊と淡海の天狗がランキングしているのが誇らしい。
 東近江市(旧八日市)には太郎坊宮がある。正式名称は「阿賀神社」という。標高350mの巨岩が露出した赤神山の中腹に鎮座している。太郎坊天狗が守護する神社である。御利益は「勝運授福」。御祭神は、正哉吾勝勝速日天忍穂耳尊(まさかあかつかちはやひあめのおしほみみのみこと)。御神徳は、「正に吾れ勝ち負けることがなく、勝つ事の速い事日の昇るが如し」から、勝運の神様と崇められているのだ。
 勝利することは常に良い結果ばかりを招くとは限らない。勝利したが故に不幸になることも現実にはある。しかし、阿賀神社では勝利することにより福を授かる。「勝運」と「授福」がセットになっているところが素晴らしい。
 自然崇拝の対象だった赤神山に阿賀神社を創建したのは聖徳太子であると伝わる。最澄(伝教大師)も神徳に感銘を受け、「赤神山成願寺」など50余りの社殿・社坊を建立した。このとき山奥から現れた太郎坊天狗が手助けをしたという。
 2021年、ぜひ訪れておきたい神社である。「病平癒」(コロナに打ち勝つ)そして、心も体も経済も「後遺症なし!」そんなことを祈りたい。
 問題は本殿へ向かう途中にある「夫婦岩」だ。「ハサミ岩」とも呼ばれ、親不孝者・嘘つき・邪心を持つ者はこの岩に挟まれると伝わる。岩と岩の隙間は約80㎝・全長約12m、真っ二つに押し開かれた裂け目は天狗の神通力によるものだ。通り抜ける自信がなければ裏参道を行くしかない。
 ところで、長命寺(近江八幡市)も聖徳太子の創建と伝わる。鐘楼の西方に総鎮守として太郎坊権現が祀られている。
 阿賀神社の太郎坊や愛宕山太郎坊と関係があるのだろうか……。
 次回に記すことにする。

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