野菜たっぷりさくさくキッシュ

　手づくり工房「みゆう」は、旧高月町内で7月にオープンしたばかりのケーキショップだ。地元の農産物や日用品を販売するお店「K＆A」の中にある。工房は元々お惣菜製造コーナーだった場所で、オープンキッチンのようになっている。
　ショーケースに並ぶケーキは常時約20種。「もう食べてしまったのか……もう1個食べたいなと思うようなケーキにしたいと思っています。高齢の方でも食べやすいように、生クリームも軽めに、あっさりめにしています」と、木田勇士さん（28）、未来さん（25）ご夫妻は話す。
　米原の蜂蜜を使ったロールケーキや伊吹牛乳のプリン、高月産そば粉入りの焼き菓子……地産地消を意識したお菓子も多い。

　勇士さんは、食感や口当たりを特別に意識している。「僕の実家は割烹料理店で、パティシエになる前は中華のコックと、料理にも関わってきたことが影響していると思います。味ももちろん大事ですが、歯ごたえや口の中で自然に調和して行く食べ心地をめざしています」。スポンジやムース系のケーキを食べてみるとわかるのだが、口の中ですっと溶けていく……滑らかなのだ。
　実は、私がとても気に入ったのは、ケーキでも焼き菓子でもなく、週に一度登場するキッシュだ。フランスの郷土料理で、生地に炒めた野菜やベーコン、生クリーム、卵、牛乳を流し入れ、オーブンで焼き上げる。見た目にはタルトぽいのだが、甘くはなく、軽食やおかず的な存在だ。

　「甘いものが苦手な人でもお店に来てもらえればと始めました。それにK＆Aに出荷される地元の野菜を使いたかったんです。出荷される方は野菜をわが子のように扱っておられて、そんな野菜の良さをそのままひきだせるのが、キッシュだったんです」。料理人としての経験も生かしたいという思いもあったそうだ。
　季節の野菜を使うので、具材はときどきで変わる。私が注文したときはベーコン、じゃがいも、たまねぎ、コーンが入っていた。ゴロゴロしたジャガイモに炒めたたまねぎの甘み……、甘さを控えたさくさくの生地は、食感にこだわる勇士さんの自信の一品。
　ケーキ屋さんのさくさくキッシュは、私にとって、別腹になりそうである（別腹になってしまいました）。
　

【椰子】