しし肉づくし

隠れ里 重内

このエントリーをはてなブックマークに追加 地域: 長浜市 2015年9月1日更新

さっと焼いて塩こしょう、わさびでいただく「しし肉焼き」、「しし骨スープのだし巻き」、外はかりっとほのあたたかく中は冷たい「アイスの天ぷら」

 ここ数年、じわじわと「ジビエブーム」なのだそうだ。ジビエとは、フランス語で狩猟によって得られる野生の鳥獣の食肉のこと。フランスでは歴史的に高級食材とみなされてきたが、近年の日本ではやはり獣害と切り離すことはできない。
 木之本町の北国街道沿いに、今年三月、しし肉料理専門店「隠れ里 重内」がオープンした。店主は、余呉町出身の磯野勉さん。木之本も余呉も、山がちな土地柄、獣害が深刻だ。磯野さんは、店を始める以前に営んでいた保険代理業でも、猪や鹿と自動車が衝突した事故を何件も担当した。ひとの生活に被害が及んでいるのを実感していたという。
 「獣害対策のためには、やはり個体数を減らすことが大事。そのためには、しし肉を食べる人が増えて、売れるようになっていくこと。そのためには安く、おいしく食べてもらうことじゃないですかね。微力ながら食から獣害を訴えていければいいなと思ってます」と磯野さんは話す。
 とはいえ磯野さん自身、最初から獣害に強い興味を持っていたというよりは、「食べてみたら意外においしかった」という経験からスタートしているようだ。若い頃から料理が好きだった磯野さんは、どうしたらしし肉をよりおいしく食べられるか、独自に研究。「しし鍋」「しし汁」「しし肉コロッケ」「しし骨スープのだし巻き」「しし骨しょうゆラーメン」などまさにしし肉づくしのメニューを生み出した。

じゃがいもがとろとろの「しし肉コロッケ」

 しし肉には「獣くさい」というイメージがつきものだが、店ではくさみがなく、やわらかなメスのしし肉のみを使用。どちらかというと牛肉を連想する味わいだ。
 私が驚いたのは「しし骨スープ」だ。ししの骨を10日間ほどかけてじっくりと、脂とアクがなくなるまで煮込んだというスープ。磯野さんがコップにいれてくれたスープは真っ白なきれいなスープだった。とはいえ、「きっと猪の味が凝縮されているんだろうな…」とおそるおそる飲んでみたが、コクはあるものの、くさみもくどさもない、さっぱりした味。豚骨ともちがう、ちょっと新しい味だと思った。このスープが、だし巻きや鍋、ラーメンなどに使われ、店の味の決め手となっている。

全国各地の日本酒

 ところで重内には、日本酒も豊富に揃っている。「七本槍」「金亀」といった近江の酒はもちろん、全国各地、東北から九州まで、さまざまな酒が並ぶ。それも、なかなか出回らない貴重な酒が多い。蔵元をめぐっている知人を通じ、独自のルートで仕入れているのだそうだ。季節、料理、好みに合わせて、磯野さんがおすすめを教えてくれる。生のくだものを使った日本酒カクテルもある。次に行く時はきっと電車で、と心に決めている。
 獣害のことを考えるのは大切なことだ。けれど食べている瞬間は、そうした考えは切り離されて、「おいしい」ことが一番だったりする。

隠れ里 重内

滋賀県長浜市木之本町木之本930
TEL: 0749-50-2362
昼の部 11:00〜14:00
夜の部 17:00〜22:00(ラストオーダー21:30)
定休日 水曜日

近隣に無料駐車場あり

店舗等の情報は取材時のものですので、お訪ねになる前にご確認ください。

はま

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