オトズレ

画家 杉尾信子さん

このエントリーをはてなブックマークに追加 地域: 愛荘町 2012年6月11日更新

 『移ろいゆく自然、身の周りの日常……感じた風景が織り成す音に寄り添い、画面に切り取りました。』杉尾信子さんからエキジビションのご案内をいただいた。杉尾さんは1977年、大阪市で生まれた。滋賀県立大学卒業後、京都造形芸術大学に入学。現在、彦根市在住。大阪や名古屋で個展を開き、2011年には東近江市のファブリカ村で個展があった。僕はまだ杉尾さんの作品を観たことがなかった。
 会場の「るーぶる愛知川」に着くと、四角いキャンバスに記号のような、それでいて不定形のラインやドットがあった。規則がありそうで探ろうとすると鮮やかに裏切られ、どう処理していいのか解らなくなった。もどかしさが満ちてゆく……。
 展示された33枚のうち20枚で構成する作品が『Diary』だ。「音景」を綴った日記だろう。その作品の前に立った時、杉尾さんは、聴こえてくる音をこんなふうに描くのだと解った。「音に寄り添う」「音景をつむぐ」ということを僕は少し、理解できたような気がした。
 瞬間、音が消えた……。
 『音』という文字は、「立」と「日」からできている。「音」と「心」を重ねると『意』という文字になる。文字に込められた意味を僕らは忘れ、本来そこにあるはずの音を聴くことができなくなった……のではないのか。
『闇』にも音があり描くことができる……のではないのか。
 杉尾さんは僕らが失った音に耳を澄ませ、今でも聴くことができる……のではないのか。
 同じ瞬間、僕は作品から音を再生することができる……のではないのか。

 杉尾さんは、海、空、山、川、大地や湖、植物や人の身体も全ての有機物を音に分解し拡散していく『音景』を捉えている……のではないのか。月も太陽も、木々のざわめき、木漏れ日にも。
 心が動くから音が生まれ、意味が生まれる。その音をキャンバスに描き留めることができる能力を杉尾さんは持っている。
 ただ、「立」と「日」の『音』という文字が意味するのは、太陽が地平に現れる音かもしれない。そういう音を聴く能力を僕は失っている。だから、杉尾さんが分解した音を再生することもできない。正確には杉尾さんの分解し描いた音を、僕が聴くだろう音へ変換する手段を見つけることができない。
 失った音を聴きたいと思った。観音降臨……、それが「オトズレ」である。さすがにそれは無理だと悟った。

 だから、杉尾さんが描く「音景」を手がかりとしたい。

 

Sugio Nobuko Exhibition ー音景をつむぐー

日時 開催中〜6月24日(日)8:00〜17:00(最終日は16:00まで)
会場 愛知川駅ギャラリー るーぶる愛知川(愛荘町市895-3 / TEL: 0749-42-8444)

店舗等の情報は取材時のものですので、お訪ねになる前にご確認ください。

編集部

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