地元の山の“山Tシャツ”を作ってみた
ワイルド池本さん
東近江市在住の池本義雄さん(64)から「伊吹山と鈴鹿の三山の山T(シャツ)を作った」と連絡をいただいた。そもそもTシャツに“山Tシャツ”というジャンルがあることも知らなかったのだが、お話を聞いてみると面白くて楽しいTシャツである。
池本さんは“ワイルド池本”と称して東近江市の能登川博物館で2016年に県内の野生ランを紹介する写真展、17年にはスミレの写真展を開かれた。そんな池本さんが登山を始めて山Tシャツを作るまでのいきさつはこうだ。
「1989年に伊吹山でパラグライダーを始め、ヒマラヤへ飛びに行くことになりました。それには登山技術が必要だと登山の訓練を始めると、登山の方が面白くなって……」。1991年、カラコルムルパールピーク登山・飛行遠征に参加後もパラグライダーを4年ほど続け、やがて登山が中心に。
百名山を登り終え、次は三百名山をと北海道から九州まで「登頂を目指すだけ」の登山を繰り返していた時、八ヶ岳でホテイランの美しさに感動。以降、ランが気になり始める。花の色、形、香りに加え、樹木や岩にしがみついて生きる着生ラン、菌と共生する菌従属性ランなど多様な生態にもどんどん興味が募り、県内にどんなランがあるのか、2009年から2年7か月間調査に没頭したそうだ。
調査対象とした75種のうち、58種を確認・撮影、希少種もたくさんあった。開花までに何年もかかるランもあり「葉っぱで見つけて、花の時期に行くのですが、平均で10回ほど足を運び、花に出会える感じ」なのだそう。珍しい植物だけに盗掘の現場を何度も確認する悔しさも経験された。
興味を覚えると、とことん突き詰めたい性格のようで、羨ましいほどだ。
Tシャツのことも聞かせて欲しいとお願いする。
「いろんな山で売られているTシャツは山の名前がだいたい漢字で書かれていて、登山に行くと会話のきっかけになり楽しいけど、普段着には向かないと思う」。普段着にもなるようにと、漢字は使わず、山の標高を表してもm(メートル)は付けず、山にちなんだデザインを考えたそうだ。
伊吹山はトラにまたがるヤマトタケルで、山頂付近にあるヤマトタケル像と、伊吹山の固有種「ルリトラノオ」にちなんでトラ(しっぽに注目)、鈴鹿山系の日本コバは「ヒョウの穴」と呼ばれる鍾乳石穴があることからヒョウ、銚子ケ口は頂上付近に咲くアカモノの花を擬人化、天狗堂は天狗の面をつけた少年と特徴的な山容をデザインした。
鈴鹿山系では最高峰の御池岳が有名で、日本コバや天狗堂はメジャーとはいいがたい。池本さんは、地元から登りやすい山を選び、あえて挑戦したという。デザインの意図がわからないと「何?」ってなりそうだが、知っていれば山の知識で盛り上がれそうだ。山Tシャツなのでもちろん速乾性のある素材を使っている。
「このシャツが地域おこしや山おこしにつながれば」と言う池本さん。次は花シリーズとして、山に咲くスミレを企画中。「自然保護活動につながる寄付金付きにしたいな」と構想は膨らんでいる。コロナ禍、山Tシャツで山気分を味わうのもいいかもしれない。
伊吹山デザインのTシャツは米原市の「道の駅 伊吹旬菜の森」と山頂売店「えびす屋」で、鈴鹿山系デザインのTシャツは、東近江市の「道の駅 奥永源寺渓流の里」で販売中。
お問い合わせ
ン・クロット 池本義雄さん
TEL 090-8983-8575
店舗等の情報は取材時のものですので、お訪ねになる前にご確認ください。
【蜻蛉】