人工衛星いぶき、人工衛星だった寶乃露

元祖 堅ボーロ本舗

このエントリーをはてなブックマークに追加 地域: 長浜市 2009年3月8日更新

 1月、種子島宇宙センターから人工衛星が打ち上げられた。地球全体の二酸化炭素やメタンなどの濃度分布を宇宙から観測する世界で初めての温室効果ガス観測技術衛星だ。地球温暖化現象の問題への貢献を目的としている。衛星の愛称は「いぶき」。地球の息づかい(息吹)である二酸化炭素を観測する衛星である。そして「いぶき」は、春の息吹。活気と明るい未来を感じる。滋賀に住む私たちには伊吹山を連想させる親しみのある名前で、今後の活躍が気になっている。もしも、伊吹山で「いぶき」を観測するイベントが計画されたら絶対に参加しようと思っている。

寶乃露

 ところで、長浜にかつて「人工衛星」という名前のお菓子があった。「元祖堅ボーロ本舗」のお菓子のひとつで、今は「寶乃露」という名前で販売されている。
 「寶乃露」は、皮に生姜砂糖が絡められた最中なのだが、おもしろいくらいにまん丸い形が、独特の存在感をはなっている。1957年にソ連から世界初の人口衛星「スプートニク1号」が打ち上げられたことにちなんで作られた。ネットで見るスプートニクは、まさにまん丸だった。でこぼこしている皮がまた、宇宙空間を漂う鉱物のようでもある。「寶乃露」は、宇宙時代の幕開けを象徴するお菓子だったのだ。
 丸い最中を発案した三代目・故清水岩雄さんは、遊び心いっぱいの人だったようだ。東京オリンピックから発想を得たのが「五色ボーロ」、大胆な色使いと愛嬌たっぷりな包装紙や長浜曳山まつりの山車を模したパッケージも、三代目考案によるものなのだという。

堅ボーロ

 元祖堅ボーロ本舗といえば、明治の創業から変わらぬ味の「堅ボーロ」で知られるお店でもある。小麦と砂糖と水を練って、オーブンで二度焼きしたものを砂糖としょうがを煮詰めたものに絡ませている。ボーロというと赤ちゃんが食べるふわっとしたものを想像するが、こちらのボーロはひたすら堅い。滋養に良いお菓子としても知られ、日清戦争時に戦地に送られ、出兵した人たちから感謝されたというのは、有名なエピソードだ。
 ふと、店のすみを見ると非常袋がある。災害のときに持ち出す、あれである。「堅ボーロは滋養はもちろん、日持ちも良いんです。日清戦争のときは慰問袋に入れましたが、現代は非常袋に入れる食べ物として知っていただければと思ってるんですよ」と現当主で五代目にあたる久雄さんの母玲子さんが教えてくださった。
 東京のパン屋で修業した初代が、パンを作るときに膨らし粉を入れ忘れた。カチカチになったパンから生まれたのが堅ボーロだったのだという。失敗からの逆転の発想に始まったこのお店は、想像力豊かな遺伝子を受け継いでいるんだなあと思う。
 玲子さんによると、現在新製品を考案中なのだという。「いぶき」にちなんだお菓子ではないのだが、今度は「柔らかいボーロ」らしいのだ。意表をつく形をしていながら、素朴で繰り返し食べたくなるお菓子にちがいない。
 ところで、店頭には、ここに顔を出して写真撮影してください、といわんばかりの額縁のような木の枠がある。その理由はぜひお店でたずねてみてほしい。「いぶき」と「寶乃露」は、たまたま、繋がっただけの話である。元祖堅ボーロ本舗では、モノ、コトの謎解きをするのが味わい深さでもあったりするのだ。

元祖 堅ボーロ本舗

滋賀県長浜市朝日町3-16 / TEL: 0749-62-1650
8:00〜19:00 / 無休

店舗等の情報は取材時のものですので、お訪ねになる前にご確認ください。

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