高月の観音さまを巡る一日

このエントリーをはてなブックマークに追加 地域: 高月町 2009年7月26日更新

西野・正妙寺の千手千足観音像

雨森・観音寺の千手観音像

 気がつくと、世の中は仏像ブームだったりする。阿修羅展が全国の博物館を巡回し、阿修羅のフィギュアは完売、雑誌は仏像入門を特集している。さまざまなアプローチがあり、仏像が身近な存在になっているんだなあ、と感じている。
 高月町は、そんなブームのずっとずっと以前から仏像が身近にある町だ。町内すべての集落に観音像や薬師如来像などが安置され、地元の人たちによって守り継がれてきた。この町が「観音の里」といわれる所以である。そのなかには、秘仏となっている観音さまもある。
 「観音の里たかつき ふるさとまつり」は、年に一度だけ町のほぼすべての観音さまに出会うことのできる日だ。当日は町内24ヶ所の観音堂、お寺がいっせいにご開帳となる。
 限られた一日……、全てを巡りたいという気持ちもある。町立観音の里歴史民俗資料館学芸員の佐々木悦也さんにそう伝えると「頑張っても1日で10ヶ所ぐらいでしょうか……」。欲張らず心静かに、お会いしたい観音さまに手を合わせるのが、「ふるさとまつり」なのだ。
 そんなわけで、佐々木さんにお勧めの観音さまを教えていただいた。
 西野・正妙寺の千手千足観音像。千本の手をもつ観音さまは数あれど、千本の足をもつ観音さまは日本ではここだけである。左右ににぎやかに伸びた脇手と脇足をもち、目と眉を吊り上げた表情に、右手に錫杖、左手にげきを握っている。実寸は50センチ足らず。迫力あるお顔と、魔夜峰央氏の描くパタリロが走る時のような足が印象的である。
 雨森・観音寺の千手観音像は脇手が特徴的だ。一般的な千手観音像の脇手は左右に広がっているものだが、この観音さまは脇手の一対を頭上高く挙げている。「袋かけ観音」とも呼ばれているのは、果樹の袋かけをする作業の手つきを表していると考えられているからだという。京都・清水寺のご本尊も同じ手つきをしているそうだ。
 西阿閉・竹蓮寺の聖観音像は川から流れてきたと伝えられているが、実は宝冠阿弥陀如来像である。修理をする際、観音さまとして祀られるようになったため、ふたつの仏さまの造形が入り混じっている。
 また、佐々木さんは「高月町ならではのロケーションとあわせて、拝観するのも素敵ですよ」という。例えば、十一面観音像が安置される片山の観音堂は、眼下に琵琶湖が広がり、松尾の松尾寺(覚念寺)からは伊香平野が一望できるそうだ。
 そして、何より高月の観音さまは、それぞれの集落の人々がお守りしているところが、奈良や京都の仏像と違うところだ。集落ごとの観音さまにまつわる物語を、世話人の方々に聞いてみる……、そんな巡り方もある。
 あれこれ事前に知識を詰め込み、コース設定を考えてみるのだが、これがまた私には苦手な作業である。ふらりと訪ねる。巡回バスやレンタサイクルの利用も可能というから、その場で決める。そして最初に出会った観音さまから巡りはじめる。お会いできる観音さまにだけ、お会いする。そして、佐々木さんに教えていただいたところに辿り着く。これが実に私らしいのである。
 

第25回「観音の里たかつき ふるさとまつり」

8月2日(日)渡岸寺観音堂境内での門前市などイベント開催予定。

お問い合わせ
観音の里ふるさとまつり実行委員会
TEL: 0749-85-6405

店舗等の情報は取材時のものですので、お訪ねになる前にご確認ください。

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