蘇れ!彦根城の桜!「桜守」

このエントリーをはてなブックマークに追加 地域: 彦根市 2009年3月22日更新

ひこね桜守のメンバー

 春爛漫、約1300本の桜が彦根城域で咲き誇る。そのほとんどがソメイヨシノである。ところが今、日本中のソメイヨシノは危機に瀕しているという。
 江戸時代にオオシマザクラとエドヒガンを交雑して作り出されたソメイヨシノは、成長速度が早い反面、種子を残すことはほとんどない。現在のソメイヨシノは、最初の一本から接木されたものが日本中に広がったもので、いわばクローン。遺伝子レベルで同じ植物である。植えられた時期が同じであれば、ある年、一斉に枯れてしまう可能性も否めない。加えて、60〜70年と寿命も短い。現在の桜の名所は、皇紀二千六百年記念や戦後復興の町づくりとして植えられたものがほとんどで、平均寿命を経過しようとしているという。
 彦根城の桜も例外ではない。彦根城を桜の名所にしようと、彦根市民の吉田繁治郎が昭和9年(1934)に植えたものである。今や老木ばかりである。最近では、昔に比べて花の色が薄くなってきたという声もあると聞いた。このまま放っておけば、いつか見納めの日がくるのかもしれないと、立ち上がった人たちがいる。


養生中の札

活動の様子

「ひこね桜守」。約10人のメンバーが中心となり、毎年、ボランティアで城内の桜の世話をしている。代表の山内勉さん(59)にお話を伺った。
 「私たちが親しんできた彦根城の桜を、子どもや孫の世代にまで受け継いでいきたいと思い、有志で始めました。他県には、100年以上生きているソメイヨシノの記録があります。桜は手をかけてやることで、長生きします。先輩市民の手で根付いた風景だからこそ、私たちの手で大切に守り続けたいです」。
 国宝や重要文化財の指定を受けた彦根城内では、土を掘り返して新芽を植え替えることは難しい。「ひこね桜守」の主な活動は、花が咲く前と咲いた後に肥料をやることと、テングス病などの病気を早期に発見して、樹医と一緒に治療をすることである。黒門前から表門までの桜には「桜の養生中。根元を踏まないでください」という札が下げられている。大勢が訪れる場所のソメイヨシノから元気がなくなってきているそうだ。
 「山崎郭などではまだ元気な姿を保っていて、毎年、花が咲くとワクワクします。彦根城の桜にはそれぞれの思い出が詰まっていると思います。もっと多くの人に桜守の活動を知ってもらって、仲間が増えていくと嬉しいですね」。
 活動開始から5年。地道な活動は始まったばかりである。心なしか、世話をした桜の色が鮮やかに蘇ってきているそうだ。
 間もなく桜の季節。昨年の桜とは違っている。ソメイヨシノの寿命が人の平均寿命より短かったとは……。

「ひこね桜守」についてのお問い合わせ

TEL: 0749-22-4554(アサヒスポーツ内)

店舗等の情報は取材時のものですので、お訪ねになる前にご確認ください。

F・B

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