波うさぎ(竹生島文様)

このエントリーをはてなブックマークに追加 地域: 長浜市 2014年10月22日更新

長浜市小谷丁野町 / 岡本神社境内観音堂

 波間を跳ぶうさぎの文様の名は「竹生島文様」という。「波うさぎ」「波にうさぎ」「波のりうさぎ」などと呼ばれることもある。
 謡曲『竹生島』に「緑樹影沈んで魚木に登る気色あり 月海上に浮かんでは兎も波を奔(はし)るか 面白の島の景色や」と謡われ、神秘的で美しい情景が浮かんでくる。竹生島文様は、謡曲『竹生島』に由来し、淡海発祥の文様だと僕は今も信じて疑わない。そして僕は、湖東湖北に存在する竹生島文様を、ずっと探している。

 昨年来、読者の方々から、波うさぎの文様が自宅にあるというご連絡を数件いただいているが、タイミングを逃してまだ伺えていない。私ごとで大変もうしわけなく、必ずお伺いしなくてはと思っているので、お待ちいただければと願っている。そんな事情もあって、しばらく波うさぎを発見しても記事を書くことをしなかったのだが……、僕は、不思議な図像を見つけてしまったのだ。
 竹生島文様は長浜市湖北町小今の日吉神社のように、大抵、前方を見据え波間を跳ぶうさぎと、振り返るうさぎの二匹のうさぎが対となっている。或いは、月が描かれているものでは、月が出ているものと出ていないものを組み合わせているものもあり、数々のバリエーションがある。僕が見てきたものは、その全てが、「うさぎ」「月」「波」の組み合わせであった。

長浜市湖北町小今 / 日吉神社

 ところが、長浜市小谷丁野町の岡本神社境内にある観音堂のそれは「うさぎと烏」だったのだ。烏だとする根拠は無いが、うさぎと登場する鳥ならば、烏でなくてはならないと経験的に僕は見た瞬間に閃き、世紀の発見だと思った。
 月にうさぎ、日輪に八咫烏(やたがらす・やたのからす)。残念ながら、月も日輪も描かれてはいないが、それらを連想するに充分である。何故、こんな文様が存在するのだろう…。
 八咫烏は今では、サッカー日本代表のシンボルマークとして知られている三本足の烏だが、日本神話において、神武天皇を大和の橿原まで案内した導きの神である。八咫烏は大和へと繋がる。波を跳ぶうさぎといえば大国主命、出雲の神である。一緒になるはずのない大和と出雲を無理矢理ひとつの図像としたところが面白く、岡本神社唯一のものに思えてくる。波うさぎ、いろいろ面白くなってきた。

小太郎

スポンサーリンク
関連キーワード