KUWASAKEスイーツ
山路酒造
木之本、北国街道沿いの山路酒造の創業は、天文元年(1532)。480年の歴史をもち日本でも最古級に数えられる酒蔵である。創業当時から作られてきたのが桑酒。文豪島崎藤村も愛飲したことで知られている。
桑酒は、桑の葉を使ったリキュールである。原料もつくり方も日本酒とはまったく異なっている。「蒸したもち米に米麹を入れ、焼酎に漬け込みます。もち米が麹の働きで糖化され、搾ると甘いお酒になるんです。これとは別に桑の葉を焼酎に漬け込んで浸出液をつくります。これらを併せて桑酒になります」と女将の山路祐子さんが教えてくださった。
疲労回復、滋養強壮に良いということで、街道を行く旅人に好まれたそうだ。近年、桑は糖尿病予防、高血圧防止に効果があると見直されている存在でもある。「自然から生まれたブドウ糖が疲れを癒してくれたのでしょう。砂糖を使えば簡単に甘味は出て、熟成にかかる手間も短縮され、もち米も麹も少なくて済みます。けれどこの天然の甘さが今に至るまで愛し続けてこられたんだと思います」。
その桑酒を使ったスイーツが誕生した。「KUWASAKEスイーツ」は全部で3種。パウンドケーキとアマンディーヌ、マドレーヌがある。「たっぷりと桑酒を使ったパウンドケーキはしっとりとした仕上がりになっています。ブルーベリージャムを練りこんだアマンディーヌはアーモンドの、マドレーヌはオレンジの香りと共に楽しんでいただけます。」
山路さんはかねてから桑酒を使ったお菓子を作りたいと構想を練っていた。完成のきっかけになったのが、お酒を購入してくれる奈良のご夫妻との出会いだった。パティシエの奥様がスイーツの製造を、デザイナーのご主人がパッケージデザインを引き受けてくれたのだという。
「桑酒の風味の生きているスイーツをお願いしますというリクエストに見事応えてくださいました。桑酒の風味がもっとも効いているのがパウンドケーキです。桑酒をかけて召し上がっていただいてもよく合いますよ。今後、桑の葉クッキー、桑酒の製造過程でできるみりんかすを使った塩クッキーも登場します。」
桑酒はリキュールである。考えてみれば、今まで洋菓子の製造に使われて来なかったのが不思議なくらいである。文豪の愛した地場産のリキュールは、これからスイーツとしての新たな歴史を刻み、注目を集めるに違いない。
山路酒造
滋賀県長浜市木之本町木之本990
TEL: 0749-82-3037
営業時間 8:00頃〜18:00頃
KUWASAKEパウンドケーキ1本1,500円、アマンディーヌ200円、マドレーヌ180円。桑酒1,450円(900ml)、1,000円(300mlひょうたん瓶)など各サイズがある。
店舗等の情報は取材時のものですので、お訪ねになる前にご確認ください。
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