持って生まれた味! 純米吟醸酒粕ジェラート

冨田酒造

このエントリーをはてなブックマークに追加 地域: 木之本町 2011年5月24日更新

冨田酒造15代目の冨田泰伸さん

 木之本、北国街道沿いの「冨田酒造」は、天文年間(1532〜1553)に創業し、400年以上の歴史をもつ蔵元だ。メインブランドは、「七本鎗」。銘は賤ヶ岳の合戦で活躍した秀吉軍の7人衆に因んでいる。冨田酒造は大正時代、芸術家で食にも精通した北大路魯山人が逗留したことでも知られ、看板の「七本鎗」の文字は魯山人のものだ。
 緑美しい5月3日、軒先にクーラーボックスが置かれ、「酒粕ジェラート」の販売が始まった。
 冨田さんと一緒にジェラートをいただいた。日本酒の香りがふんわり口の中に広がり、後からミルクの風味がほどけてくる。
 「ミルクベースのジェラートに七本鎗の純米吟醸粕をそのまま練りこんでいます。東近江にある池田牧場さんに製造を委託しました。せっかく酒粕を使うのですから風味が消えないように配合バランスを重視しました」と15代目の冨田泰伸さん(36)が教えてくださった。
 日本酒を使ってジェラートにした場合と酒粕を使ってジェラートにした場合とでは、酒粕を使った方が日本酒らしい風味が素晴らしくでるそうだ。配合バランスは試行錯誤の結果である。
 日本酒は米と米麹と水を原料に生まれる。原料が柔らかく発酵したもろみを搾った液体が酒で、残ったものが酒粕である。アミノ酸やビタミン類を豊富に含み生活習慣病や美肌に効能があるといわれている。

 最近では日本酒は大抵、圧搾機を使って搾るのだが、七本鎗の純米吟醸は、未だに木槽(きぶね)搾りである。酒槽(さかふね)ともいい、昔ながらの、惜しみなく手間暇かけた日本酒なのである。その酒粕をジェラートに使っているのだ。
 「酒蔵へ友達同士で来てくださるような場合、飲めない方はどうしても時間を持て余してしまわれます。ジェラートから日本酒に興味をもっていただけるようなことがあってもいいと思うんです。酒で酒を仕込んだ貴醸酒という、とても甘い酒をジェラートにかけて食べてもおいしいですよ」。
 冨田さんは酒造りに携わりながら、日本酒のおいしさを伝えるための取り組みにも力を入れている。日本酒離れを食い止めるためでもあるのだが、単に消費されるモノとしてではなく、モノと人との関わりを大切にしたいという思いがある。

 魯山人の本をめくってみた。こんな言葉があった。『原料の原味を殺さないのが料理のコツのひとつであります。(中略)その持って生まれた味を殺さないように工夫しなければなりません(後略)』。
 持って生まれた味……。
 日本酒を搾れば酒粕はできるが、厳密にいえば、酒粕の味もひと樽ごとに違っている。人と木之本の風土が育む七本鎗の木槽搾り酒粕。魯山人が「素材の味」とせず「持って生まれた」としたのはそういうところにあるのではないだろうか。


冨田酒造

滋賀県長浜市木之本町木之本1107
TEL: 0749-82-2013
営業時間 9:00〜18:00 / 定休日 火曜日

酒粕ジェラート350円 - 1個から発送も可能(送料・保冷包装分は別途)
貴醸酒は1,575円(200ml)

店舗等の情報は取材時のものですので、お訪ねになる前にご確認ください。

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