大人の書道教室
坂根沙綾さん
「美文字」なるものがブームなのだそうだ。テレビ番組の中で芸能人がボールペン字を競うコーナーで人気に火がつき、「美文字」は今年の流行語大賞にもノミネートされたらしい。その影響もあってか、最近では二十から三十代を中心に若い世代で書道をはじめる人が増えているのだという。
そう話してくれたのは、書家で画家の坂根沙綾さんだ。沙綾さんは彦根市薩摩町の自宅で大人向けの書道教室を開いている。
沙綾さんが本格的に書道教室を開くようになったのは、東日本大震災がきっかけだ。
福島県郡山市出身の沙綾さんは、幼少の頃からずっと、父親であり書家である増子哲舟氏から書を学んできた。高校・大学時代は美術方面へ進み、水彩画や油絵、日本画なども学び、卒業後は画家としての活動の場を広げた。一時は書から離れかけたが、「絵を見るのと同じように字を見ればいい」という父親の言葉で、書は字をただ書くのではなく墨を使った一つの表現なのだと気づいたのだそうだ。
その後、福島の老舗和菓子店のパッケージ文字や看板文字を手がけるなど活躍。さらに、墨を用いた独自の世界観の書画を描くようになった。そして、結婚を機に滋賀県へ移住、5年前から彦根市の現在の自宅で活動を続けている。
「震災後、福島の復興のためにできることは何かと考えたとき、父から学んできた書を人に伝えていかなければならないのではないかと思いました。滋賀にいる自分ができるのは福島のことをもっと知ってもらうことだと」。 震災は、沙綾さんにとって、自分のルーツである福島、そして書をもう一度見つめ直す機会だったのだろう。
いまや、コンピュータ全盛の時代。文字を手書きする機会もめっきり減ってしまった。しかし、だからこそ、日本人としてきれいな字を書きたい、書けるようになりたいというのが昨今の美文字ブームの根底にあるのではないか。そして、なにより、書道は字をきれいに書くだけでなく、美しい日本語を表現する自分と向き合う作業でもある。心を落ち着けて机に向かい静かに筆をとる……忙しい現代の生活の中で忘れられてしまった所作がそこにはある。
もうすぐ新年。心機一転して、書道に打ち込んでみるというのもいいかもしれない。
大人の書道教室
滋賀県彦根市薩摩町1391-2
TEL: 080-6117-5891
月3回 月謝4,000円 教本代600円
曜日・時間は要相談
書道cafe 美文字レッスン
毎月第3水曜日 10:00〜12:00
場所 Yeti Fazenda(滋賀県彦根市日夏町2908-5)
参加費 2,500円(コーヒー・ドーナツ付き)
定員 5名(要予約)/ TEL: 080-6117-5891
店舗等の情報は取材時のものですので、お訪ねになる前にご確認ください。
【編集部】