今も……、  水が流れている

トンボ研究家 澤田弘行さん

このエントリーをはてなブックマークに追加 地域: 東近江市 愛荘町 2012年9月14日更新

澤田弘之さん(能登川博物館提供)

 8月末、澤田さんに連絡しなくてはならないことがあって電話をかけたら、思いがけず澤田弘行(65)さんの声がした。携帯電話のインデックスには、「澤田・澤田」と入っている。昔は、どっちの澤田さんか、「澤田・澤田」で覚えていたのだが、それを忘れるくらい2人の澤田さんと連絡をとっていない。
 澤田弘行さんに間違えたことを伝え、懐かしい声に何かの幸運とばかりに僕の相変わらずを伝えながら少し長い話になった。
 澤田さんはトンボ研究家で、本格的に写真を撮り始めて15年。今も野山をカメラと捕虫網を持って駆け巡る。大抵は何処に居るかわからない。
 澤田さんは詩人でもある。僕が初めてお会いしたのは句会という場だった。あの時から10年を越える時間が流れている……。野山を巡り、写真を撮り、年に10回の自然観察会を自ら主宰し、以前もそれからも澤田さんのライフスタイルは変わらない。「自然観察会は最初は2〜3人でしたが、今では大抵、定員オーバーです。それに最近ではトンボの同定(種名を調べる行為)ができる子どもたちも現れて、独りで地道にやってきましたが、その甲斐がありました」。

ヤマサナエ(澤田弘行さん撮影)

 本職は水道技師。技師として水を巡る延長にトンボがある。水辺にはトンボが飛び、その美しさに魅せられたのだという。仕事を離れても水のことを考え続けている脳裏に、翅が光る一瞬があったりするのだろう。或いは、耳元をかすめる翅音……。
 「今、能登川博物館で『野のいのち』写真展(9月9日まで)をやっているので、暇だったら見て欲しい。その次は愛荘町で写真展をするから……」。
 博物館には、90点の写真と詩10編が展示してあった。2万枚以上の撮り溜めた中から選んだ写真で、トンボばかりでなく、草花や里山の風景が切り取られ、「川」、「湖」、「湿地」、「溜池」、「山」、「里山」、「田んぼ」の7つのテーマに従って行儀良く並んでいる。
 「写真は同じ風景を撮ったとしても同じじゃない。澤田という自分が出るんです。気持ちが映るというか……」。
 句会でお会いした時、僕は、いずれ写真を撮りに一緒に連れて行って欲しいからと約束したような気がしている。未だに果たせていない。僕は、果たしていない約束ばかり多い。いずれ果たすことになるから無理はしない(言い訳かもしれない)。だから、水の匂いのする写真を見に、愛荘町にも行くと思う。詩も全部読んでいないし……。

湖国の自然と身近な生きものたち 写真と詩のコラボレーション
野のいのち —澤田弘行写真展—

会期:
2012年9月15日(土)~10月7日(日) 10時~18時
月・火曜日、9/22(土)・9/26(水)は休館
会場:
愛知川びんてまりの館・愛知川図書館(入場無料)
滋賀県愛知郡愛荘町市1673 TEL: 0749-42-4114

澤田弘行さん

滋賀県東近江市横溝町224 / TEL: 090-2592-4503

店舗等の情報は取材時のものですので、お訪ねになる前にご確認ください。

小太郎

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