農業をデザインする

Ryu-s米原 立澤竜也さん

このエントリーをはてなブックマークに追加 地域: 米原市 2010年8月11日更新

Ryu-s 米原の立澤竜也さん

 始まりは茄子だった。友人が「うちの店でとれた野菜」といって分けてくれたのだ。「うちの店」というのは、友人が勤める服屋さんだ。服屋さんと、野菜……???
 服屋さん「Ryu-s」は、岡山県のデニムブランド「KAPITAL」をメインに、オリジナルデザインのウェアが揃う店である。Ryu-sの建物の裏には150坪の畑が広がっている。店長の立澤竜也さんが今春Ryu-sをオープンする前から作り始めた畑で、今、スタッフも加わって手入れをしている。
 立澤さんの本職は、デザイナーである。グラフィックデザインをはじめ、彦根の花しょうぶ通り商店街にある戦国グッズのショップ「しょうぶ屋」の商品、Ryu-sに並ぶオリジナルブランドのウェアやアクセサリーなどをデザインしている。

ショップの隣に広がる畑

 「ずっとこの地域を何か元気にするようなことをしたいと考えていたんです。Ryu-sをオープンするにあたり、ただの服屋をしてもおもしろくない、ここでしかできないこと、農業もしようと思ったんです」。
 長浜のまちなか出身の立澤さんにとって、農業は未知の世界だった。縁あって知り合った農家さんに耕運機の使い方、土の触り方を学び、少しづつ作物を増やしていった。収穫した野菜は、レストランに出荷したり、Ryu-sで買い物をしてくれた人へのノベルティにしているという。
 「僕は農家にはなれないけれど農業と服をつなぐことはできるんです。ジーンズを買ったら野菜がついてきたってお客さんは喜んでくれるし、畑に興味をもってくれます。ブランド物を扱う服屋は都会に行けばいくらでもある。けれど畑のある服屋ができるのは、この地だから。戦国グッズのデザインにしても同じなんです。滋賀が戦国時代の重要な舞台だったからこそ、ここから生まれるグッズに人気が集まるんだと思うんです」。

立澤さんが育てたトマト

 畑では、藍や綿ものびのびと育っている。染物をしたり、綿から糸を紡いで服を仕立てたり……いずれは畑を開放してみんなが楽しめる農園にしたいとも考えているそうだ。「農業と服の組み合わせは、自分にとってのひとつのデザインなんです。これまで自分がしてきたデザインでも異素材を組み合わせることには柔軟でした。それと同じですね」。畑は、デザイナー立澤さんにとって新しい素材なのだ。素材の可能性を広げ、いかに価値あるものにするかは腕の見せ所である。
 Ryu-sのキッチンのシンクには、採れたてのトマトや茄子が井戸水で冷やされている。すすめられてトマトを口に放りこむ。トマトってやっぱり夏の食べ物なんだなあ、と体が実感するみずみずしさがある。立澤さんの狙い通りだったりするのだ。

Ryu-s米原

滋賀県米原市磯1551 TEL: 0749-52-1541
平日11:00〜20:00(土日祝は10:00〜) / 無休

KAPITAL:デニム12,390円〜、ピエロパンツ14,490円〜など。オリジナルTシャツ3,990円〜。レザー製品、アクセサリーなどもある。

店舗等の情報は取材時のものですので、お訪ねになる前にご確認ください。

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