模型というこの世界
オリオン模型 坂本昭憲さん
大通寺の表参道に「オリオン模型」がある。ふいに何処からか現れる時間限定の店のようにウインドーが明るく浮かんでいた。仕事を終えて、辺りが暗くなっていたせいだろう。
プラモデルの箱が積まれた店内を背景に、時間をかけて作り込まれたプラモデルの完成品がディスプレーされていた。かつて朝までプラモデル作りに熱中した経験があるなら、多分、キラリと瞳が輝くはずだ。
観光客が多い表参道で頑固に模型店を営んでいるのは坂本昭憲さんという。遂に、年齢は教えてもらえなかったが、お話から推測すると60代前半だろう。プラモデル・ラジコン・エアーガン……、商品を販売するより、先ず、何でも楽しみ自分でやり尽くす。そして、どんなに楽しいかを訪れる人に伝える仕事をしているようだ。
「学生の頃から模型店をしたいと考えていました。家業の紳士服店を継いだのですが、表参道の整備が始まる時に、決心したんです。20年ほど前のことです。」
オリオン模型の一画に、ライトプレーンを見つけた。飛ぶということを重視した模型だ。露出したままのリムやバルサ材の匂いが懐かしい。坂本さん曰く「今作ると昔より腕が落ちてることが解りますよ」。ちょっと悔しい。
近郊に模型の量販店が増え、インターネットが普及し始める頃で、模型店のアイデアは「やめておけ!」と随分と反対もあったらしい。それでも、好きな模型の側で坂本さんは生きる道を選んだ。
「あまり上手ではないですが、作り続けています。時間があればずっと作ってますね。」
僕はプラモデルをもう随分と作っていない。
思えば、プラモデル、或いは模型には2種類あったように思う。ギアボックスと電池とモーター、ゼンマイでもゴムでもいい、何らかを動力として動くことを目的としたものと、リアルに何処までも精緻に作っていくもの……。想像するだけで、溶剤の匂いが戻ってくる。
どちらかと言えば僕は、飾っておくだけのものには興味はなかった。できるだけ長く飛ぶ飛行機、速く走るレーシングカー、どんな傾斜も登る戦車。大抵は失敗したが、『できるだけ』のために時間を費やした。
「プラモデルは、基本的に今も昔も変わりません。バッテリーやモーターの技術は進化しています。パーツを磨き、塗装し、リアルに見せるための部品の数々もそろっています。あとは納得するまで、何処まで作り込むかでしょう。」
オリオン模型を訪れ、坂本さんに会ったなら、もう一度、プラモデルを作ってみたくなるはずだ。坂本さんは、「プラモデル初心者のための制作マニュアル」を用意して待っている。勿論、僕もキラリと瞳が輝いた。僕は駆動系が好きだから、まずは、プラモデルではないが、ライトプレーンから……、ヘリコプターも魅力的だ。オリオン模型は、かなり危険な店になりそうだ。かなりヤバいと思っている。
オリオン模型
長浜市元浜町17-2
TEL: 0749-63-5678 / FAX: 0749-64-0955
営業時間 10:00〜20:00 / 火曜日定休
「琵琶湖モデラーズクラブ」のお問い合わせもオリオン模型まで
店舗等の情報は取材時のものですので、お訪ねになる前にご確認ください。
【雲行】