I’s Art paint
音瀬伊都子さん
夢京橋キャッスルロード沿いのチョークアートカフェ「Cafe & Bar 伊沙羅(イザラ)」は、編集部の向かいにある。2階からの眺めは僕らの日常の一部になっている。いつ頃からだろう…、チョークアートの素敵な看板が通りを飾っていた。そもそも、チョークアートとは何なのか? 様々な定義があるが、黒い背景にオイルパステルを使い鮮やかな色とグラデーションを使って表現する。ドライパステルやアクリル絵の具を使うアーティストもいるらしい。近年日本でもアートの分野として注目され、まちのあちこちでよく見かけるようになったが、伊沙羅のそれはどことはなく、雰囲気が異なっていた。
伊沙羅のメニューボードを描いていたのは、オーナーの音瀬伊都子さんだった。
「15年前、イギリスのパブ文化に興味をもち、病のリハビリも兼ねてイギリスに渡航。その時にパブ看板や看板メニューに出会いました。今、思い出しても素敵でしたね」。
黒板アートに魅せられて、伊都子さんは店内の看板を自分で描くようになった。日本にチョークアートの文化が入ってきたのは10年前くらいで、インターネットも現在ほど発達しているわけもなく、全てが手探りだった。チョーク集めから始めて、また、それが楽しかったという。
「最近ではようやくチョークアートも普及してきて、3年ほど前に滋賀にもチョークアートの先生がおられることを知り、彦根で体験教室を開いていただきました。先生のチョークアートはヤバすぎると思いました」。『ヤバすぎる』『ヤバい』という言葉は近頃は「ものすごく感動する」「とても素晴らしい」などの感嘆の表現として用いるようだ。
老若男女、誰でもが手軽に楽しむことができるアートだからこそ、音瀬さんは、独学ではなくちゃんと先生について学びたかったという。チョークアートにも系譜や流儀があり、グラデーションの表現が独得なのだという。僕が、伊沙羅のメニューボードのそれをどことはなく、雰囲気が異なっているなと思ったのは、音瀬さんが学んだグラデーションの技法によるものだったのだ。
実は…、音瀬さんにはチョークアートを志すもうひとつの理由がある。
「病のことで今の仕事がキツくなってきました。チョークアートの教室を開くことができればと思っています」。
チョークアートの知識・技術を追求するため新たな先生のもとで学び、念願叶って今春インストラクターの資格をとった。誰でもがアーティストを名乗ることができる時代にあって、ここに至るまで20年。黒い背景に指でパステルを延ばし桜を描く人を眺めながら、ようやく想い描いたライフスタイルが実現しつつあるのだと想った。
「日本人らしいチョークアートをやろうと考えているんです」。気が付けば2階からの日常の眺めがまた少し変わったりするのかもしれない。
チョークアートカフェ「Cafe & Bar 伊沙羅」
滋賀県彦根市本町1-7-43
TEL: 0749-26-6620(12:00~21:00 お問い合わせはお気軽に)
☆チョークアートでお絵描き教室『Enjoyコース』
☆『1Day体験レッスン』『オリジナルコース』
材料・道具は準備不要。出来上がった作品は持ち帰ることができる。時間は応相談。
店舗等の情報は取材時のものですので、お訪ねになる前にご確認ください。
【小太郎】