ほたてあかりで広がるつながりの環

このエントリーをはてなブックマークに追加 地域: 彦根市 2012年2月15日更新

 宮城県本吉郡南三陸町歌津田の浦地区。昨年、8月に滋賀県立大学の建築科の学生が中心となって番屋(漁師さんの小屋)を建てさせてもらったのをきっかけに、以来、毎月この小さな漁村に通っている。
 「漁業復興まで浜の女性に仕事はない。その間、何か皆で集まれる場と仕事をつくれないか。そしてその仕事が少しでもお金になればいい。」
 そんな話を田の浦の女性たちとしたことで始まったのが「田の浦ほたてあかり」プロジェクトだ。
 「ほたてあかり」は田の浦にあるホタテ貝と滋賀のお寺で出る残蝋を使って作られるエコキャンドルである。中のホタテ貝には作っている女性たちからのメッセージが書かれている。「3月11日を忘れない」「ろうそくの灯る時間は東北を想ってほしい」そんな想いが込められている。様々な試行錯誤を重ね、新年に入ってからやっと販売できる体制が整った。
 僕たちは「ほたてあかり」の始まった背景、想いを、、少しずつだが伝えてまわった。びわ湖を一周したこともあった。地道な活動だったが、滋賀を中心にカフェやお店、道の駅等でも販売させていただくことができ、新聞やテレビ等のメディアでも報道していただき、少しずつ広まってきた。今では思いもよらない所から注文が来たりする。お陰さまで、販売個数、予約個数は徐々に増え、多くの人に賛同いただけているのは本当にありがたい。今では生産が追いつかない状況になっている。
 ただ、そんな状況で色々と思うこともある。「ほたてあかり」は何のためにやっているのだろうと。売れてお金が田の浦に入るのはとてもいいのだけれど、注文に追いつくためにはその数を作ってもらわなければならない。でも、「ほたてあかり」を作る「場」は「工場」ではないし、楽しんでやってもらいたい。

 田の浦へ行くと、先ず女性たちの作業する仮設住宅の一室へと向かう。玄関先には靴がたくさん並び、中に入るとみんながワイワイ作業をしている。僕たちが行くと、彦根で買ってきたひこにゃんのお菓子でお茶をするのが恒例だ。この時間に近況報告をしたりする。
 この前は、細間宏通教授(滋賀県大)に作ってもらった「ほたて節」を聴いてもらったり、「ほたてあかり」を買ってくれた方々からのメッセージだったり、写真、ビデオレターを見てもらったりした。それを見て涙を流した方もいたし、喜んでもらえたと思う。恥ずかしながら、実は今まで「つながる」とか「つなげる」って言葉がピンとこなかったのだが、やっとなんとなく分かってきた気がする。
 今では田の浦と滋賀だけではなく、「ほたてあかり」を通じて長野、香川、兵庫へも広がっている。兵庫の方からは「ほたてあかり」を結婚式の引き出物にしたいとの連絡をいただいた。このプロジェクトは、田の浦の女性たちを何かサポートできればと進めてきた。でも今度は、彼女たちと一緒に結婚する二人をサポートする番だ。復興支援なんて枠組みはもうどこかへ行ってしまっている。
 田の浦では5月頃から漁業が本格的に再開する。女性も「ほたてあかり」から海の仕事へ戻ることになる。でも、その後もずっと、「ほたてあかり」が復興支援商品というものを超えた、心と心を本当に「つなぐもの」であって欲しいと思う。それをサポートするのが僕たちの役目だ。

滋賀県立大学大学院環境科学研究科環境計画学専攻
大北 篤

震災復興支援商品「ほたてあかり」

お問い合わせ先
TEL: 090-4279-6814(山形)FAX: 0749-28-8621

田浦ファンクラブ 応援ショップ(オンラインショップ)
1個  500円・5個1セット(送料別途)

店舗等の情報は取材時のものですので、お訪ねになる前にご確認ください。

編集部

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