伊吹山文化資料館へGO!

このエントリーをはてなブックマークに追加 地域: 米原市 2021年3月8日更新


 DADAジャーナル2020年6月号の淡海の妖怪「ガワタにトッコを抜かれてはたまらん!!」で、国の天然記念物〝イヌワシ〟の幼鳥の剥製が伊吹山文化資料館(米原市春照)に展示されていることを紹介した。その続報である。
 資料館の人に聞くと、イヌワシの幼鳥の剥製展示はとても珍しく、「全国でもここだけじゃないかな」とのことだ。しかも、剥製の隣では同市に住む動物写真家・須藤一成さんが撮影した「伊吹山にイヌワシが舞う」と題した約15分の映像が流れている。この幼鳥が孵化したときのひなの姿。2週間ほどしかなかったであろう巣立ち後の羽ばたく姿もとらえられている。ぎこちない飛翔の姿は、頑張れ! と声をかけたくなるような頼りなさがかわいい。
 イヌワシの幼鳥が伊吹山中で傷つき衰弱した状態で発見されたのは2019年7月中頃、巣立ちは7月初めに確認され、それは伊吹山では15年ぶりのことだった。何故傷ついたのかはわからない。保護され、手厚い看護を受けたが再び羽ばたくことはなかった。雄だった。翼長は約1.8m、体重は約2.4㎏で、幼鳥の特徴である白い斑紋が見て取れる。幼鳥とはいえ堂々とした姿で、鳥とは思えない足の太さは天狗のイメージそのものだ。
 イヌワシは山岳地帯に生息する猛禽類で、生態系の頂点にいると言われる。ウサギや蛇などの小動物、ときにはカモシカの子どもなども獲物となる。国内での生息数は減少の一途をたどり、絶滅が危惧されている。伊吹山には一つがいが生息し、それは自然が豊かなことの証でもある。2019年に続き、2020年にも巣立ちが確認された。
 幼鳥の剥製展示が始まって8か月。イヌワシや自然環境に思いを馳せて欲しいと、ここにいるのではないかという気がしてきた。

剥製が劣化するのかどうかは知らないが、時が経つほど生きていた姿から遠くなる気がしてならない。モノとして剥製らしくなっていくまえに、できるだけ早く一度はみておくことをおすすめしたい。

 2020年7月「唄屋の縁」で、日本最大のダム「徳山ダム」に沈んだ旧徳山村で一人暮らしを続けた廣瀬ゆきえさんの生涯を取材した写真家・大西暢夫さんの著書「ホハレ峠」を知り、一気に読んだ。ゆきえさんの生涯は滋賀にも縁があり、大西さんがホハレ峠を越え、滋賀県に足を踏み入れ、さらにゆきえさんの記憶を検証するため取材を重ねるところでは、大西さんも感じたのと同様ではないかと思うほどの高揚感を感じた。
 伊吹山文化資料館では大西暢夫さんの写真展を開く。タイトルは未定だが、近江と西美濃の峠の交流が中心になりそうとのことだ。会期は3月27日から5月5日。会期中の4月11日には大西さんの監督作品「水になった村」の上映会、同18日には講演会も予定されている。詳細はまたお伝えできればと思う。
 伊吹山文化資料館から目が離せない。

 

伊吹山文化資料館

滋賀県米原市春照77
TEL: 0749-58-0252
開館  9:00〜17:00(入館は16:30まで)・月曜、祝日の翌日休館

入館料  高校生以上200円、小中学生100円

店舗等の情報は取材時のものですので、お訪ねになる前にご確認ください。

蜻蛉

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