キッチン井筒屋とプチミュージアム

このエントリーをはてなブックマークに追加 地域: 米原市 2020年8月28日更新

「湖北のおはなし」ラッピングカー

 前号のDADAで「駅弁は通り過ぎるまちが誇る逸品を少しずつ味わうことができる弁当である。旅を愛する人は「駅弁」を「汽車弁」というのだと聞いたことがある。……誰にも教わることのない旅の作法が汽車弁と呼ばせるのかもしれない」と書いた。
 米原駅で販売されている新幹線グルメ「湖北のおはなし」は、創業以来130余年、駅弁づくり一筋、井筒屋の秀逸な汽車弁である
 8月17日、僕は株式会社井筒屋の本社に「湖北のおはなし」を買いに行った。昼下がり「湖北のおはなし」を肴に麦酒を……というわけだ。
 驚いたことに玄関に、栗おこわの「湖北のおはなし」のラッピングカーが停まっていた。春は山菜、夏は枝豆、秋は栗、冬は黒豆と季節によって変化するおこわは、栗が一番人気だそうだ(個人的には、黒豆、山菜、枝豆、栗の順位なのだが)。
 ラッピングカーは井筒屋ブランドの「湖北のおはなし」をより多くの人に知ってもらいたいという願いが込められている。

駅弁ショーケース

キッチン井筒屋

 新しい駅弁が発売されると聞いていたが、コロナ禍のご時世で目処がたたないらしい。世界の人々が観光を目的に旅をする大移動時代の訪れは遠い未来のことになってしまった。その代わりというのではないだろうが、本社の一画に「キッチン井筒屋」が8月21日オープンする。営業時間は9時30分〜15時、オーダーストップは14時30分。
 駅弁はもちろん、米原駅のホームにあった、昔ながらの立ち食い蕎麦を食べることができるらしい(かけ蕎麦・うどん各350円〜・人気の本格派ビーフカレー850円)。
 僕は米原→彦根は近江鉄道を利用することが圧倒的に多かった。なんとなく旅する気分を味わえたからかもしれない。わざわざ3番・4番ホームに立ち食い蕎麦を食べにいった記憶がある。陶製の器と短めの割り箸。ネギは入れ放題だったような……。
 キッチン井筒屋では、記憶を遡る旅ができそうである。

プチミュージアム

プチミュージアム

 本社の玄関を入ると左側に駅弁のショーケースがある。好みの駅弁を買い求めてキッチン井筒屋までは20歩程。この十数歩の間に井筒屋の歴史を展示したプチミュージアムがあった。
 駅弁の掛け紙や汽車土瓶(お茶の容器)などの資料とともに、「湖北のおはなし」の開発者である四代目宮川仁子さんの新聞記事も展示してあった。こんな雰囲気の人だったのか……と、記事を全部読むことができなかったのが残念だったが、デジタル資料では感じることができない時間が降り積もっていた。
 汽車弁の美味しさは物理的移動だけによるものではないということだ。

株式会社 井筒屋

滋賀県 米原市下多良2丁目1番地
TEL: 0749-52-0006 (受付時間 8:00~15:00)

店舗等の情報は取材時のものですので、お訪ねになる前にご確認ください。

小太郎

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