「尊意」と「こねり山」

このエントリーをはてなブックマークに追加 地域: 米原市 2020年5月28日更新

成光寺から望むこねり山

 DADA4月号「淡海の妖怪」の中で、比叡山中興の祖・元三大師良源について、「元三大師と呼ばれるのは正月三日にお生まれになったから」と書いてあった。米原市上丹生に住む木彫師・森哲荘さんから「生まれた日じゃなくて、お亡くなりになった日ですよ」とご指摘をいただいた。
 森さんは「元三大師良源は18世座主で、13世座主に法性坊尊意というお坊さんがおられ、上丹生の出身なんや。それでな……」と「へーそうなん」という話を聞かせてくださったので紹介したい。
 上丹生には「こねり山」と呼ばれる山があり、こねりは「子祈り」が転じたもので、尊意が生まれる前、両親が子宝を授かりたいと祈った山がこねり山なのだとか……。そして山から流れる清水は「法性坊、初洗い(うぶあらい)の水」とされ、それは「いぼとり水」として知られている。いぼとり水の近くに立つ看板にはちゃんとそのことが書かれていて、近くには「法性坊尊意上人誕生□」と刻まれた石碑もあった。□は苔に埋もれて読めない。おそらく「地」だろう。いぼとり地蔵堂の背後に控える一段高いところは「法性坊跡」と伝わっている。

いぼとり地蔵堂(右が石碑、背後の小高いところが法性坊跡)

 元三大師は疫病を払い、おみくじの元祖としても知られているが、一方の尊意にも逸話がある。
 尊意はあの菅原道真の師であると伝わり、九州に流された菅原道真の怨霊におびえる醍醐天皇は、道真を調伏させられる人物として尊意を御所に招く。尊意を乗せた牛車が御所へと急ぐ場面は「北野天満宮絵巻」に描かれていて、道中、鴨川の水流が左右に分かれたのだそうだ。

尊意石碑

 更に、道真を祀る亀戸天神社(東京都江東区)内にある御嶽神社は、祭神が尊意で、お坊さんが神様として祀られていることになる。尊意が亡くなったのが、2月卯の日、卯の刻であったことから「卯の神」として知られているそうだ。
 現在、米原市上丹生には浄土真宗本願寺派の寺院「成光寺」があり、山号は法性山。尊意の名前が残されている。
 同郷の有名人を知ることは何だか楽しくてうれしくなる。法性坊尊意、忘れることはないだろう。

蜻蛉

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