Hakmokrenで過ごす時間

cafe & gallery Hakmokren

このエントリーをはてなブックマークに追加 地域: 東近江市 2012年4月11日更新

 旧五個荘町に昨年オープンしたカフェギャラリー「Hakmokren」。オーナーの有岡保行さん(62)が、築後200年の商家を、その趣を極力残して改装した。かまどや井戸が残る台所には、有岡さんがコレクションしてきた古い和食器を展示。ギャラリースペースの部屋には、各地からセレクトした陶器、ガラス、木工の作品が並んでいる。そして見晴らしのいい窓があるかつての客室は、カフェとしての空間になっている。
 カップもポットも、ソーサーも、カフェで出されるのはすべて、有岡さんの手がけた陶器だ。長く大学で陶芸を教え、自らも作陶するなかで、ずっと取り組んできたのが食器だった。「手に触れる、口に触れる……人が水を飲む器は焼き物の原点だと考えています。機能的であればいいというものでもない。色や形をうまく取り入れ、小さな世界で遊ぶんです」。

 運ばれた紅茶を一口含んで驚いた。ごくシンプルなデザインのカップにくちびるが吸い付くという表現をすれば良いだろうか……。カップの飲み口の厚みが絶妙で、器に口が触れる感触に違和感がない。
 有岡さんは大阪から五個荘に移り住んで10年になる。五個荘の景色を見て回るうち、空き家になっていたこの建物をすっかり気に入ってしまったのだという。
 「例えば敷居や雨戸は傷んだ部分だけ直せるような仕組みになっていたり、虫食いを想定して太い柱にしたり……。贅沢ではない、シンプルで機能的な造りなんです。近江商人のものを大事にする心意気を感じます。住む役割が終わってしまったこの建物で何かできればいいな、というのがお店を始める出発点でした」

 有岡さんに「見てください」と言われ、カフェスペースと、それに隣接する部屋とをまたぐ梁を仰いだ。幅の太い立派な梁なのに、カフェの方からはその幅を半分ほどに見せている。隣の部屋は居室(きょしつ)だったそうだ。なぜでしょうと尋ねると「なぜでしょうね。それを考えるのが楽しくて」有岡さんは本当にうれしそうだった。
 梁の謎を話し合ううちに気づいた。有岡さんの器も、展示されている個々の作品も、そしてこの建物も、ものとしてのあり方が似ている。大事にすべきところをきちんと守りながら、どこかにふっと心緩むような仕掛けや隙がある。
 Hakmokrenはカフェとしても、ギャラリーとしても、そして建物を見ているだけでも過ごすことができる、そんな場所である。

cafe & gallery Hakmokren(ハクモクレン)

滋賀県東近江市五個荘川並町743
TEL: 0748-26-2429
営業 金・土・日曜日
営業時間 11:00〜17:00

夏季(8月頃)・冬期(2月頃)は長期休業予定年に6回の企画展も予定されている。普段は常設として、各種工芸作品が並ぶ。

店舗等の情報は取材時のものですので、お訪ねになる前にご確認ください。

椰子

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