秋の雨の日に、茶くらで
茶房 茶くら
旧愛東町。稲刈りの終わった田が連なる集落のなかに、茶房「茶くら」はある。
お隣から譲り受けた蔵を改装して、「茶くら」を開店したのは、木村和美さん。永源寺から運ばれこの地に移されたという蔵は、築何年経つかわからないほど古く、骨董や古いものを愛する木村さん夫妻にとって、憧れの存在だったのだという。壁を塗り替え、2階をとり、隣接していた物置きを厨房に造り変えた。
木村さんに厨房を案内されると、そこには井戸があった。昔、生活用水として使われてきたものなのだろう、今も清涼な水が湧いている。この水を沸かし、飲み物が作られている。
「今、コーヒーを入れますね。どの器になさいますか」。壁にはカップがディスプレイしてあってそこから好みの器を選ぶことができる。素朴な陶器、個性的な作家もの、北欧テイスト…どれも木村さん夫妻がこれまでに集めてきたものだ。「カップを置いている棚は、もともとこの蔵の階段だったものなんですよ」。
テーブルや椅子は舟板で造られている。「素朴でぬくもりがあるでしょう」と木村さんがテーブルをなでる。雨が降っているせいか、蔵の中はしっとりとした空気が流れている。私はシンプルな白のカップを選んだ。
きっと100年以上経つのだろう蔵は、雨の音を聞き、それぞれのモノからあふれる時間の重みが、茶くらの空間を作り出しているのだと思う。コーヒーを飲みながら細い雨を見ているひとときがずっとあるような錯覚が襲った。
茶房 茶くら
滋賀県東近江市平尾町572 (平尾公民館前)
TEL: 0749-46-1260
営業時間 10:00〜17:00 / 不定休
ブレンドコーヒー・紅茶400円、月替わりのコーヒー500円 / シフォン、チーズケーキ、ガトーショコラなど木村さん手作りのケーキ300円、ケーキセット600円など
店舗等の情報は取材時のものですので、お訪ねになる前にご確認ください。
【いと】