時を遡り、旅するように……

フルート奏者 井伊亮子さん

このエントリーをはてなブックマークに追加 地域: 彦根市 2012年3月12日更新

井伊亮子さん

 私にとって笛は小学校時代のリコーダーである。だから井伊亮子さんが手にしているフルートを間近に見たときは、70センチはあるだろうその長さに驚いた。「端のキィまで手が届かないために、小さな子どもはフルートに触れ合う機会がなかったんです。今はU字管のフルートも登場し、手の長さを気にせず練習することもできますよ」。
 井伊さんがフルートを始めたのは中学1年生のときだ。息をつかう楽器を吹いてみたかったのだという。「息づかいがそのまま音になるところに魅力を感じています。自分の国の音楽も知りたいと、篠笛や能管など邦楽の笛も学びました。笛という楽器そのものが大好き。興味が尽きないんです」。
 今は生まれ育った彦根を拠点に、フリーの奏者として全国各地で演奏活動を行っている。そのひとつが「エコーメモリアル・チェンバー・オーケストラ」である。
 1997年、ひこね市文化プラザの開館を機に、彦根市出身や彦根にゆかりのある若手演奏家を中心に結成された室内オーケストラだ。彦根から未来の演奏家を生み出したい。これがエコーメモリアル・チェンバー・オーケストラの目的だ。
 「学生の頃は、演奏会に行くために時間を気にしながら電車に飛び乗り東京や大阪まで出向いていて、地元で質の高い演奏を聴く機会が少ないのが残念でした。そんな思いがあるからこそ、各地で活躍するメンバーが彦根に集結し、演奏を聴いてもらうことで、良い演奏を身近に感じてほしい。演奏を聴いてくれた子どもたちが将来メンバーとして彦根で演奏してほしいと思っています」。
 井伊さんは結成時からのメンバーとして、彦根で年に一、二度開催される演奏会に参加してきた。彦根のまちに貢献できれば、との思いが込められている。
 私にとってオーケストラやクラシック音楽の世界は難しい……。不覚にも眠りに誘われることさえある。
 「難しい知識は必要ないんです。いろんな国の作曲家がいて、時代背景も曲のテーマも様々にあります。時代を遡ってその国を旅するように聴いてみてください。眠ってしまってもいいんです。起きたときに音楽が流れていたら素敵だと思いませんか」。
 音を楽しむと書いて音楽。シンプルなことを改めて感じている。
 「エコーメモリアル・チェンバー・オーケストラ」は結成15周年。時を遡り、見知らぬ国を旅するように……。心が動いた。

 

井伊亮子さん

彦根市尾末町在住。愛知県立芸術大学音楽学部卒業。フルートを永長次郎、白石孝子、村田四郎の各氏に師事。スイスシオン国際アカデミーにてトレヴァー・ワイ氏のマスタークラスを修了。ブルガリア国立ソフィアフィルハーモニー管弦楽団と共演するなど、国内外でソロや室内楽での演奏活動を行っている。また笛(邦楽囃子)を寶山左衛門氏に師事。大河ドラマ「武蔵」では笛指導を行った。あうろすフルートあんさんぶる団員。ムジカA国際音楽協会会員。

店舗等の情報は取材時のものですので、お訪ねになる前にご確認ください。

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