石の側らに……

磯部瑛仁さん

このエントリーをはてなブックマークに追加 地域: 東近江市 2011年6月14日更新

アメリカ先住民居住区でペリドットを採集(2歳)

 小さな男の子がハンマーを手に岩場にいる写真を見せていただいた。磯部瑛仁(いそべあきひと)さん1歳。父に連れられて採集に訪れた場所での記念写真である。瑛仁さんは、現在近江兄弟社高校3年生、17歳になる。12歳のとき多賀の鍾乳洞・佐目の風穴で、古代人の歯を発見した。古代人の歯は滋賀県では初めての発見だった。京都大学霊長類研究室の鑑定によると、縄文もしくは弥生時代の人間の歯で、現代でいうと6、7歳の子どものものと考えられるという。近江に暮らした古代人の生活を探る上でも貴重な資料となった。
「個人的には鍾乳石が見つかればいいなあと思いながら探していたんです。一目見て、人の歯だとわかりました。まだ歯が1本見つかっただけですが、きっと、まだまだ何かあると思います」。

新発見の「古代人の歯」

 瑛仁さんは、岩石、鉱物、化石など、「石」と名付けられた全てに興味があるという。2歳にして、アメリカのアリゾナ州で宝石のペリドットを採集した。学校のある今は、週末に鉱山跡などへ出かけ石を採集している。
 瑛仁さんは「石好き」、言い換えれば「石を愛する」一家の中で育った。瑛仁さんの父は、マリオ先生のニックネームを持つ鉱物化石研究家で、八日市地学趣味の会を主宰する敏雄さん(61)である。母美保子さん(46)も弟晶碩さん(14)も石に魅せられている……。
 自宅の一室は、大きな水晶や、宝石の原石、隕石や鉱物化石など1万点もの石が陳列された標本室になっている。

磯部瑛仁さん

「石が身近にあるのが当然だったから、小さいとき友達の家に行ったら石がないのに驚きました」。瑛仁さんは時間があれば、標本室の石を取り出してはルーペで観察している。飽きることがない。「ただ、石が好きで好きでそばにあればそれでいい」という。高校卒業後の進路はアメリカに渡り、現地の鉱物同好者と様々な鉱物を採集・研究したいという。
「次は何が見つかるかなと掘っていくのが何より楽しい。これまでにたくさんの石を採集してきた父に少しでも追いつきたい。もっともっと採集して研究して、新たな発見もしたい」。
 瑛仁さんの名前の「瑛」という字には「透明な美石」という意味がある。その名に込めた両親の思いもまた、瑛仁さん自身によって磨かれ、輝きを増していくことだろう。12歳の発見はたまたま古代人の歯だったというわけだ。
 ところで、もう誰だったか忘れたが、「眠るのも忘れて没頭できるモノを見つけることだ。見つかるまではいろんなことをやればいい」と言っていた。まだ、誰にでも遅いということはない。まだまだ、これからである。

磯部瑛仁さん

八日市地学趣味の会 東近江市沖野5-8-7 / TEL&FAX: 0748-22-6548

店舗等の情報は取材時のものですので、お訪ねになる前にご確認ください。

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