ダンサーになりたい！

　ダンスの世界に生きる人がいる。杉原禎さん（26）。
　ダンサーとしてのお名前は「TADASHI」である。東京にお住まいで、安室奈美恵さんら歌手のコンサートツアーの専属ダンサーを務めたり、講師としてレッスンを行っている。去年から出身の彦根をはじめ、滋賀県内でヒップホップダンスのワークショップを始めた。
　「東京には多くのダンススタジオがありますが、滋賀にはまだまだ本格的に教えてくれるところって少ないです。ダンスを学びたい、プロダンサーになりたい人の力になりたいと思っています」。
　ダンスにハマったのは中学のときだという。本格的に学びたいと上京した。
　「何かを表現する人になりたかったんです。ただダンスにこだわっているわけではなかったから止めようと思うこともありました。荷物をまとめて彦根に帰る寸前まで行ったこともあります。けれど各方面で活躍するその道のプロとの出会いのなかで、やはり自分の生きる道はダンスしかないと思うようになったんです」。

　彦根で行われたワークショップを見学させていただいた。一連の動きを短く区切りながらTADASHIさんが見本を示していく。それらをつなぎあわせて形にしていく。振り付けはすべてオリジナルだ。どんな音楽でも振り付けは自分で考えるものなのだという。受講生たちの集中力が伝わってくる。TADASHIさんの動きを追いかける視線が見えるようだ。
　ワークショップの終わりにTADASHIさんが、その日練習したところを独演してくださった。みんなが夢中で携帯片手で写真をとる。ほーおとため息がもれた。
　「自分自身まだまだ発展途上ではあるけれど、僕を踏み台にしてみんなが進んでいってほしい」。TADASHIさんは自分を超えるダンサーが滋賀から誕生することを願っているのだと思った。
　私でも踊れるものですかと尋ねていた。
「大丈夫。自分の感じるリズムでいいんです。訓練すれば必ず踊れます」。
　俄然やる気になった…。ダンスをする姿のかっこよさもあるけれど、飾らないTADASHIさんとの会話が楽しかったからでもある。

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