包丁研ぎます

小菅一宏さん

このエントリーをはてなブックマークに追加 地域: 彦根市 2011年1月2日更新

小菅一宏さん

 「包丁研ギマス ¥500〜」。
 彦根・花しょうぶ通り商店街、「村川商店」の店先で見つけたのぼりだ。村川商店はタバコや有機栽培食品を扱っている。尋ねてみると、「包丁を研いでくれる方への取り次ぎをしている」のだという。どんな人がどんな風に研ぐのだろう……取り次いでもらい、小菅一宏さん(72)にお会いした。
 小菅さんがリフォーム業の傍ら包丁研ぎのサービスを始めて、5年ほどになる。当初は村川商店さんの店頭で請け負っていたが、現在は自宅近くの作業場で研ぎの作業を行っている。数種の砥石を使い分け、刃の減り具合や材質に合った研ぎ方で仕上げていく。小菅さんの本業の都合にもよるが、朝に包丁を預けると早ければ夕方には返ってくる。包丁だけではなく、刃物全般お任せできる。
「もともとは高速道路関係の建設に従事し全国を転々としていました。20年ほど前、彦根に戻り、リフォームの仕事を始めました。長く彦根を離れていたので知っている顔が少なくなってしまって、新たな人間関係を築くきっかけになればと始めました」。
 仕事柄、大工さんなど建築関係の職人の友人も多く、そうした関わりのなかで研ぎの技術を高めていったという。「家庭でも刃を整えることができるシャープナーがありますが、研ぐことと、削ることは違います。魚をお造りにするときには細胞を壊さないように切ることが大切というでしょう。刃の切れ味は切ったものの透明感につながるんです」。小菅さんが職人さんから学ばれたのは、刃物を扱うことへの美意識でもあるのだ。

 作業場へ案内していただいた。刃を砥石にあてる角度や、砥石の種類、仕上げ……研ぎながら説明していただく。「預かった包丁から、どんな人が使っているんだろうなあと想像しますね」。刃物だけではなく、すべての道具は本来こんな風に扱われてきたはずなのだ。
「依頼してくださるのは、10年以上同じ包丁を使っているという人が多いですね。長年大事に使われているからこそ、切れるようにしてお返ししたいという思いがあります」。
 大工の家に生まれ育った私にとって、カンナやノミといった刃物や砥石は興味深い遊び道具だった。研ぎ方も教えますよ、と小菅さんは話していた。こっそり小菅さんに弟子入りして、職人の父をあっと言わせてみるというのもおもしろいかもしれない。

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