目指せ!日々運通し! ふんどしのすすめ

馬場昭さん

このエントリーをはてなブックマークに追加 地域: 彦根市 2010年3月1日更新

馬場昭さんとふんどし

 稲枝にお住まいの馬場昭さんという人にお会いした。すらりとしていていまどきの好青年という感じである。ただ、ふつうの若者と少し違う。ふだん身に着けている下着がふんどしなのである。さらに稲枝発のふんどしの製作・販売を行っていたりする。
 なぜ、今、ふんどしなのか? これには馬場さんと湖東の伝統工芸品である麻織物「近江上布」との出会いが深く関わっている。
 音楽好きの馬場さんは、稲枝で音楽イベントをしたいと思いたったことがきっかけで、地元の若者を集めた青年団「稲枝青楽団」を結成。稲枝をにぎやかにしようとイベントを企画していくなかで、近江上布の伝統工芸士・大西實さんと出会った……。

 近江上布は鎌倉・室町の時代から湖東地域を中心に生産されてきた麻織物だ。近江商人の活躍でその名が広まり、江戸時代には彦根藩の奨励で地場産業として発展した。周辺地域では農家の副業として浸透し、苧績(おうみ=苧麻の皮から取った繊維を細かく裂き、長くつなぐこと)・機織は農家の日常の風景となった。彦根藩は天明年間(1781〜1789)に、品質を管理するため麻布改役所を設け、不良品の販売を禁止。これにより、近江麻布は「上布」の評価を得るようになった。現在その技術は細々と受け継がれている。

柔らかな肌触りが特徴の近江上布のふんどし

 馬場さんはそれまでほとんど知らずにいた地元の伝統産業と、大西さんの人柄に魅せられた。
 麻にはごわごわというイメージもあるが、麻の品種によってその質感は全く違う。細い麻糸を使って織る近江上布は絹織物のような柔らかな肌触りが特徴である。通気性も抜群だ。「近江上布のもつ力」を実感し、多くの人に共感してもらえればと大西さんの織物を使い、青楽団のメンバーでふんどしを製作、販売を始めた。

 ふんどしには女性用もある。男性用も女性用もつけ方は同じで、しかもいたって簡単なのだと教えていただいた。腰から布をまたがせて紐でしばり、余った布はまた紐にまたがせる。「こうして余った布の部分は出してジーンズの上で見せてもいいですよ」と馬場さん。スモーキーなグリーンやブルーなどかわいい色も揃っていて、ふんどしが服装のアクセントになっている。 

稲枝青楽団のふんどしを片手に

 実は馬場さんは8月2日生まれ。「パン・ツー」の日である(ふんどしを薦める馬場さんにとって奇妙な巡り合わせである)。去年の誕生日、馬場さんはパンツと訣別した。「琵琶湖へ行ってね、持っていたすべてのパンツを燃やしました。以来ずっとふんどしです。ゴムの締め付けで体を圧迫されることもなく、心も体も解放されて気持ちいいですよ」。
 爽やかである。
 海外での滞在経験も豊富な馬場さんにとって、近江上布もふんどしも、日本古来のものを見直す実践のひとつなのだ。
 ふんどしという言葉の語源には「運通し」という説があるそうだ。ふんどしは一枚の布の先端を縫い止めない。そこには運の流れを止めないという願いが込められている。
 もうすぐ私の手元にもふんどしがやってくる。運が開く一歩になればと思っている。運通しの日々の訪れである。

新之助上布 ふんどし

注文・お問い合わせ: 稲枝青楽団(馬場)
TEL: 0749-43-2389 / inasei8@gmail.com

1枚2,300円。色は各種あり、注文時に応相談。

店舗等の情報は取材時のものですので、お訪ねになる前にご確認ください。

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