世界で最も美しい風景

このエントリーをはてなブックマークに追加 地域: 長浜市 2014年1月13日更新

 あけまして、おめでとうございます。言葉にすると照れくさいが、新しい年を生きていることに感謝したい。本年もどうぞよろしくお願いいたします。
 僕は世界中を周ったわけでもなく、また、日本中を旅したこともなく、淡海をくまなく巡ったこともない。ただ、本当に美しい風景がある。世界で最も美しいかもしれないと思うことがここ数年、多くなった。「心が土に返るための準備を始めた」のだという。
 2014年、世界で最も美しい風景は、大崎寺から望む琵琶湖である。初詣に立ち寄ったわけではなく「天狗岩」を見るためだった。夕暮れ……、思わぬ絶景にみとれた。
 海津大崎は「暁霧(ぎょうむ)海津大崎の岩礁」として、琵琶湖八景のひとつで有数の景勝地だ。県道西浅井マキノ線第一トンネルを抜けたところ、山々が湖に迫り出している。溺れる岬の中腹に近江西国9番の札所・西近江七福神の毘沙門天を祀る大崎寺がある。本尊の千手観音は開基(大宝2年=702)泰澄大師の作。隆盛を極めた頃は39の僧坊があったという。

 石段を登った先の樹木に囲まれた本堂から琵琶湖を一望することができ、この眺めだけでもう充分なのだが、世界で最も美しい風景はもう一つ向こうの岬まで行かなければならない。
 まず、「安土の血天井」として知られる阿弥陀堂を通り過ぎる。
 天正晩年、豊臣秀吉は安土城で戦死した人々の菩提を弔うためその忠血で彩られた城材をもって大崎観音堂の修繕に充て、法要を営んだ。これが安土の血天井と呼ばれ、昭和41年の観音堂改修に際し阿弥陀堂に移されたものである。今も梅雨期には、血痕が滲み出し、その痕跡が現れるといわれている(案内版より)。
 この先は、ハイキングコースのような道が「天狗岩」へと続いている。

 途中、磐座だろう大岩が屹立し神霊が移された後の祠が3つ並んでいた。神々が在った証の場所である。そして、突き出す岬の展望台に出る。天狗が立てばさぞ似合うだろう岩が露出している。ここが僕の目的地だ。
 眼下に湖があった。
 「心が土に返るための準備」を始めている。過去に何度か見た風景だったとしても、初めての経験には違いがない。世界で最も美しい風景は、未来のある日、ある時、世界が拡がる瞬間に更新されていくだろう。そして、二度と出会うことはない。
 淡海をくまなく巡ったわけではないが、その時々の世界で最も美しい風景を、今年もお伝えしたいと思う。それを良しとしていただけるならばこれほど嬉しいことはない。

編集部

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