二人の「作家」墨彩画とアクセサリーの新作展

このエントリーをはてなブックマークに追加 地域: 彦根市 2013年12月9日更新

髙橋良さんと奥さんの夏美さん

 「作家」と呼ばれる人たちに、漫然とした憧れをずっと抱いている。小説家という意味ではなく、ものを創り出す専門家・芸術家という意味での作家だ。それはきっと、何者かになりたかった20代前半の淡い思い出を引きずっているからなのだけれど、それはさておき、素敵な作家夫婦に出会った。水墨画家の髙橋良さんとアクセサリーデザイナーの夏美さんだ。2人は彦根の出身で、現在、彦根市中央町の自宅アトリエを拠点にそれぞれの活動を展開している。
 良さんは、子どものころから絵を描くのが好きで、20代前半に大阪のデザイン学校で墨に出合い、水墨画家を志すようになった。以来、独学で水墨画を学び作風を確立した。夏美さんは、大阪南船場のアクセサリーショップで働いたのち独立。
t nouge(タ・ヌージュ)としてオリジナルアクセサリー制作を行っている。
 2006年には2人でハンガリーに渡り、1年間現地で過ごした。良さんはデッサンを学び、夏美さんはステンドグラス職人のもとで修業した。その後、故郷の彦根に戻り結婚、現在に至る。
 「結婚したことで、もしかしたら夫の画家としての活動を制約してしまっているのではないかと思うこともあります」と夏美さんは言う。しかし、それはきっと悪いことではない。事実、長男の蒼くんが生まれてから、良さんの作風は、墨だけを使った水墨画から色を使った墨彩画へと変わったのだそうだ。「catch」と名付けられた赤い鳥が印象的な最近の作品群は、愛情や幸福といったポジティブな面と、煩悩や災いといったネガティブな面の両方がモチーフとなっている。そこには、子どもを授かった喜びと、この大変な時代に子どもを育て生きていくことへの憂い、そして、それでも未来へと羽ばたいていってほしいという良さんの願いが込められている。
 「catchというシリーズは輝かしい未来を願うテーマで描き続けています。昨年に子供を授かり色彩を取り入れる様になった事が制作の糸口となりました。赤い鳥は人間の愛情や幸福、快楽などポジティブな反面、人間の煩悩や悪、身近に起こる災いなどネガティブな両面を兼ねたモチーフとして表現しています。
現代の子供たちはそれら両方を抱え選択し、手放したり掴みとったりしながら生きていかなければならない。その一つ一つが大きな球体となり、明るい未来に向けて一斉に飛びたつ事を私は祈って描いています。」良さんの言葉だ。
 それは、同世代の子どもを持つ僕たちの希望でもある。
 アトリエでは、二人の新作展「-UNCOUNTABLE-」が12月11日(水)まで開催されている。来年には彦根市内の別の場所にアトリエの移転を計画しているそうで、ここでの展示は今回が最後になる。
 二人の作家は、次のターニングポイントを経て、また新しい展開を見せてくれるに違いない。

t nouge × Ryo Takahashi Exhibition - UNCOUNTABLE -

日時  2013年12月6日(金)〜12月11日(水)11:00〜18:00
会場  滋賀県彦根市中央町7-47 Kビル2階
TEL: 0749-20-4963

中央商店街から路地に入り、長松寺向かいの「花・笑家」の門をくぐり左手の階段を上った2階です。

店舗等の情報は取材時のものですので、お訪ねになる前にご確認ください。

編集部

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