天狗残滓

このエントリーをはてなブックマークに追加 地域: 2013年11月7日更新

 民間伝承(フォークロア)に対する都市伝説(アーバンロア)、インターネットの怪談(ネットロア)の一つとして現在進行形で語らる妖怪たちで近頃ブームである。今や昔話を離れ、人の集まるところに新たなイメージで妖怪は必ず出現するようになった。
 12月、彦根ゴーストツアーが予定されている。「天狗現る!」の章である。ツアーが始まるまで淡海妖怪学波としては、今も少なからず残る湖東・湖北の天狗がいた痕跡を探してみたい。
 例えば、竹生島には天狗が住んでいたとされ、旧びわ町早崎にある竹生島一の鳥居横にある石碑には天狗の爪痕が残っている。天狗が竹生島に持ち帰ろうと石碑を掴んだ時に石が欠け爪も落ちてしまったのだという。この爪が今も竹生島に寺宝として遺っている(びわ町昔ばなし)。天狗がいた証が存在するところが面白い。
 また例えば、『ある人が晩に竹の棒をつかんで「誰か来おった」と叫んで駆け出して行き、そのまま見つからなくなった。一週間たっても帰らないので、親類が天狗の好物のうどんを屋根の上にお供えしたら、うどんは食べられていて、男はいなくなった場所にその時刻に帰ってきた』(余呉村の民俗―滋賀県伊香郡余呉村―)という話がある。天狗の好物はうどんだったのだ。
 竹生島や余呉の天狗は語り継がれた天狗であり現代の話ではない。唯一、今も存在する天狗が東近江市の太郎坊天狗だ。彦根ゴーストツアーで最初に訪れる場所である。
 標高350mの巨岩が露出した赤神山の中腹にある正式名称「阿賀神社」は『太郎坊さん』の名で親しまれ、現在も神社の守護神とされているのが「太郎坊の天狗」なのだ。

 

編集部

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