熱い夏!

甲子園観戦記(彦根東高校 対 花巻東高校)

このエントリーをはてなブックマークに追加 地域: 彦根市 2013年8月26日更新

 2013年8月13日、阪神甲子園球場の三塁側アルプススタンドは、赤一色で埋め尽くされた。第95回全国高校野球選手権大会 6日目第3試合、彦根東高校対花巻東高校。
 彦根東高校の夏の甲子園出場は初めてということもあって、多くの人々が応援に駆けつけた。なにしろ、県大会で優勝を勝ち取っての甲子園出場だ。選手にとっても、OBにとっても、そして、地元彦根市民にとっても悲願の夏の甲子園。彦根市内はすっからかんなのではないかなんて冗談が飛び交うほどだった。
 彦根東高校野球部の正確な創部の時期については定かでない。現在の生徒会にあたる「崇廣(すうこう)会」が明治27年(1894)に発足し、その規則第四条で陸上運動部のなかに野球部があることが記されている。これが野球部に関する最も古い記録で、県下高校最古の創部とされている。崇廣会の規則が掲げられたのは、日清戦争勃発と同年の、明治27年(1894)だが、それ以前にも野球部の活動はあり、明治20年(1887)頃には創部されていたのではないかと推測されている。初の対外試合は、明治30年(1897)6月13日、愛知一中(現旭丘)を校庭に迎えて対戦し、21対11で勝利した。
 大正4年(1915)、「全国中等学校優勝野球大会」が開催される。夏の甲子園の始まりである。

 僕自身、甲子園に来るのは2回目だ。4年前の春のセンバツで彦根東が出場したときにも来た。あのときのアルプススタンドもすごかったが、場内を包み込む熱気と声援のうねりに圧倒された。沸騰する熱い甲子園の夏があった。
 試合のほうは衆知だろう。序盤から花巻東に得点を許し、終始追い上げる試合展開。しかし、決して一方的な試合ではなかった。5回の裏には2点を返して2対5、さらに得点を許して迎えた8回の裏には3点を返して5対9。9回表にはエースの平尾投手から交代した田邊投手が三者連続三振と活躍を見せ、球場のムードは最高潮に達した。9回裏で逆転サヨナラもありえるんじゃないかと誰もが期待した矢先に三者凡退で試合終了となった。
 残念ながら、甲子園初勝利とはならなかったが、7点差の終盤8回の裏に見せた、決してあきらめない粘り強さを、心に強く刻んだ。試合終了後に甲子園の土を集める選手の姿を茫然と眺めながら、僕は試合の余韻に浸っていた。
 『この一球は絶対無二の一球なり/されば身心を挙げて一打すべし/この一球一打に技を磨き体力を鍛へ精神力を養ふべきなり/この一打に今の自己を発揮すべし/これを庭球する心といふ』。早稲田大学OBの福田雅之助が部に贈ったものだが、『この一球は絶対無二の一球なり』のフレーズは、あまりにも有名だ。
 甲子園に来ると、絶対無二の一球を必ず思い返すことになるのだが(実は僕は高校時代はテニス部部長だ)、果たして……。

編集部

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