カーナビと知らない世界
胡桃谷の名水……余呉町上丹生から菅並への道沿いにある。自然の湧水で「生命の源となるふるさとの名水」と記してあった。飲んでみると、喉ごしがスムーズで名水の醍醐味だろうか。ペットボトルの取水口が微笑ましい。
僕の車にもカーナビが付いているけれど、県外に出かけた時くらいしか使うことはない。そのルートがどうあれ、目的地までのナビは約束の時間を守ることができて実にありがたい。
しかし、路肩に車をとめて地図を眺めながらルートを決めていた時代が懐かしくもある。林道を走るのが好きだったので、前へ進むことができなくなり、登ってきた道をそのままバックで引き返すことも度々だった。遠回りもしたし、夜中まで帰ることができないこともあった。行き当たりばったり……、僕の人生みたいだとよく言ったりする。それでも無事に生還できているので良しとしている。
近ごろは取材に出かけても、世の中が平準化したせいか、或いは、僕が衰えた(進化した)こともあるだろうが、迷うとか引き返すということをしなくなった。引き返すことを恐れなければ何処までも行くことができる。帰らなくてもいいのかもしれない。
もうすぐ柔らかな美しい緑の季節が訪れる。知らない世界を走る時、カーナビやマップは必要ない。白地図を描いていく……。そうすれば自分にとって大切なものは何なのか、明らかになっていくことだろう。
【小太郎】