賤ヶ岳隧道

このエントリーをはてなブックマークに追加 地域: 長浜市 2012年11月20日更新

 賤ヶ岳隧道は、大正13年着工、4年後の昭和2年(1927)7月に完成している。残された工事銘板には村田鶴の名はないが、意匠は横山隧道佐和山隧道と酷似している(『“道”を拓いた偉人伝』(永冨謙著・イカロス出版株式会社・2011年)。現在のトンネルができるまでは国道のトンネルとして使われていた。本当は「賤ヶ岳隧道」ではなく『隧道と村田鶴 賤ヶ岳隧道』というタイトルになるはずだったが、まだ書く自信がない。とりあえず、写真だけでも撮りに出かけた日は秋の入り口、木之本側から旧賤ヶ岳トンネルを抜けた時の奥びわ湖は、それはもう美しい風景がひろがっていた。この琵琶湖北岸周遊道路を通ったことのある人は、鮮やかに思いだすことができるに違いない。
 トンネル内部で奇妙なものを見つけた。丁寧に結わえた空きかんやペットボトルが吊り下げてあるのだ。しかも何カ所も。車で風を切ると、音が響く……。風鈴のように音を楽しむためのものだろうか。琵琶湖側から風が集まり強くなると自然と音を発することもあるだろうと思われた。
 しかし、実際はトンネル内に投げ捨てられた空き缶やペットボトルを放置するには忍びなく、誰かが始めたのだろう。或いは一旦、こうして吊しておいて、一気に回収する作戦だろうか。それならば分別してあるはずだが……。やはり、手間のかかる結わえ方からしても、心ある人の仕業だろう。この隧道のオブジェの製作者に会ってお話を聞いてみたいと思った。ご存知の方に編集部までご一報いただけると嬉しかったりする。
 世の中には通り過ぎてしまうとそれまでだが、少し立ち止まることで全く異なった風景に出会うことがある。今、ようやく人生が面白くなってきた。

小太郎

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