湖の辺の道 ルール

このエントリーをはてなブックマークに追加 地域: 彦根市 2012年9月28日更新

湖の辺の道

 『近江湖の辺の道』は、志賀町近江舞子集団施設地区と近江八幡集団施設地区を北まわりに結ぶ約140キロの環びわ湖周遊自然歩道のひとつである。琵琶湖の優れた景勝地や沿岸の観光地、文化財など、恵まれた自然環境や価値ある文化遺産と触れあうことができる自然歩道だ。この道沿いに、昨年4月にオープンした認知症高齢者グループホーム『湖の辺の道』がある。自然の中で暮らし、四季を感じ、心豊かな生活をご提供したいという思いが施設の名に込められている。
 『湖の辺の道』の敷地を利用して秋のバザールが行われるというので、所長の田付芳久さんを訪ねた。強い雨が断続的に降った日で、何処か異国に入り込んだような気がした。
 午前10時過ぎ…、懐かしい知人が昼食の準備をしている。僕はもう忘れていたのだが、「宙(そら)の母です」。僕はそれで全て了解した。宙は傷だらけのオス猫。その傷は逃げるときに負ったものは一つもなかった。

所長の田付芳久さん

 ダイニングキッチンにお年寄りが9人とスタッフ……大家族が暮らす家のようだ。廊下の壁面は施設で行われた行事の記録写真がギヤラリーのように貼られている。皆、ひとしきり笑った後のような表情をしている。
 田付さんと獣医の三木勇雄さんが話しておられた。前号のDADAで彦根市立病院の羊の記事があったが、『湖の辺の道』でもアニマルセラピーとして2頭の羊を飼っている。最近調子が悪いというので三木さんは羊の様子を看にきたのだ。バザールの話をしたかったのだが「羊」の話になった。勿論、羊以外の話もしたが、一つ屋根の下の一つのフロア、ダイニングの気配を感じながら約2時間、話は尽きなかった。
 昼食の用意ができたから一緒に食べようという。外は雨、雨が止むまでしばらく宿っていきなさいと無防備に招き入れられた……。

2頭の羊を飼っている

 「ここは、皆が自由に笑顔で暮らしてほしい。そう願っています。朝食も今まで暮らして来られた環境もありますから、好きな時間に食べることができるようにしています。扉にも鍵をかけていません。バザールも、この敷地で日常と繋がった時間のなかで楽しいことがあれば、笑顔が生まれますよね。今年で2回目になります」。
 ようやく田付さんとバザールの話になった。フリーマーケット、オカリナコンサート、ヨシ笛・篠笛演奏、サックス演奏会、占いコーナーなどが計画されている。目的は「笑顔を!」という理由以外は何も無かった。スケジュールはだいたい決まっているが、極端なことを言えばそこには誰が来て何をしようが基本的にルールは無い。「笑顔を!」という目的が共有できるならばOKだ。
 スタッフの方々も、京都から伊吹から、栗東から『湖の辺の道』を手伝いに来ている。田付さんの願いを知るが故のことに違いない。
 僕はひねくれているので、家族だとか笑顔だとか、そういうぽかぽかとあたたかいものの存在を受け入れることができないでいるが、「笑顔を!」という田付さんの思いの元にできあがる、組織やルールにものすごく興味がある。だから、自分の中の「笑顔を!」のルールに従って、宙の母さんの作るお昼を食べに、訪れるのだろうと思う……。

ホームスイートホーム 湖の辺の道

滋賀県彦根市新海町霞開 2237番地
TEL: 0749-43-4332

秋のバザール

2012年9月30日(日) 10:00〜
フリーマーケット、オカリナコンサート、ヨシ笛・篠笛演奏、サックス演奏会、占いコーナーなど

店舗等の情報は取材時のものですので、お訪ねになる前にご確認ください。

小太郎

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