犬上川のメイとサツキとハク

このエントリーをはてなブックマークに追加 地域: 彦根市 2012年9月19日更新

 彦根市立病院を望む犬上川の堤防道路沿い、ひつじのメイとサツキとハクが、モコモコの身体で土手の草を食む。その姿は愛らしく、近所の子どもたちや来院する人たちの人気を集めている。
 犬上川の北岸に沿って続く堤防道路は、車1台分ほどの幅で、大きな木が生い茂り、散歩にはもってこいのコースだが、狭い道をスピードを緩めず走る車や、手入れ不足で鬱蒼とした竹木のせいで川を眺めることができず、歩く人の姿を見ることは少ない。また、人気がないためにゴミのポイ捨ても多いという。
 この夏、その道路沿いでひつじを育てる活動を始めたのは、市立病院の有志職員や地域の人たちによる2つのボランティア団体だ。1つは、「彦根市民健康サポーターズ倶楽部」。病院と地域の掛橋になるよう健康講座やイベントの開催、エフエムひこねで医療についての様々な情報を提供するラジオ番組づくりを行っている。もう1つは病院を訪れる人たちに癒しをと病院敷地内に花を植える活動を行う「ラ・フルールの会」だ。
 両会では現在、病院近くの犬上川の河川敷に遊歩道を作る公園化に取り組んでいる。3匹のひつじたちはその一環として、除草効果とアニマルセラピー効果を期待されやってきたのだ。両会の発起人である市立病院循環器科の綿貫正人医師(58)は「地域の人や病院の患者さんが訪れ、おしゃべりしたり川に下りたり、ひつじさんに出会える交流の場を作りたい。環境が良くなればゴミを捨てる人も、車でスピードを出す人も少なくなるはず」と話す。
 以前から河川敷の公園化計画はあったが、実行に移されることはなかった。現在、毎月第2・4土曜日の午前中に約10名のメンバーが、ひつじの世話や花壇の手入れ、そして河川敷の整備をしている。いずれも体力の要る仕事である。決して平均年齢が若いとはいえないメンバーが、作業日以外の日もコツコツと作業を続けている。
 夜勤明けに草引きをする病院職員の姿に地域の人は刺激を受け、職員は昼食休憩中、窓越しに黙々と草をむしる地域の人の姿に刺激を受けるのだそうだ。中心となり熱心に活動を続けている女性は「いつか病院の中でお世話になる時がくるかもしれないけれど、できるだけそうならないように運動がてら病院のまわりのお世話をしているんです」と語る。
 河川敷の整備を出来るだけ急ぐためには機械を使いたいところだが、今必要なのは機械の力ではなく、ひとりでも多くの人の手だという。
 川の対岸には県立大学もある。いろんな立場の人が関わることで、病院という特殊な空間の垣根が豊かな形に変化すればと願っている。
 ところで、ひつじの名付け親はどうやら綿貫先生らしい。メイとサツキ、ハクとくれば4匹目はあの名前だと思うのだがどうだろう。楽しみである。

 

お問い合わせ

「彦根市民健康サポーターズ倶楽部」事務局
TEL: 0748-46-4200

店舗等の情報は取材時のものですので、お訪ねになる前にご確認ください。

れん

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