森 哲荘展のこと

このエントリーをはてなブックマークに追加 地域: 米原市 2012年7月30日更新

森哲荘さん

 森哲荘さんは、1946年生まれで今年65歳。米原市下丹生で、15歳から50年、木彫一筋に生きてきた職人だ。僕らは哲荘さんと呼ばせていただいている。
 最近では、小林秀雄のCDを貸していただき、そのついでに『森哲荘展』のDMをいただいた。ついでに的渡し方がいかにも哲荘さんらしいのである。僕らは以前、生誕50年を記念する森哲荘展の準備とオープニングを手伝ったことがある。今回の『森哲荘展』は、木彫を始めて50年を記念する個展である。DMには「父・秀男のすすめに従い、木彫の道に入り50年を越えました。この間、多くの出会いに恵まれ今の私がいます。皆様に作品をご覧頂き、今一度自分を見つめる機会にしたいと個展を企画しました」とあった。個展には木彫の他、若い頃は画家になりたかったという哲荘さんが描いた絵も展示するという。25歳の時に本格的に描き始め、結婚を機に絵を描くことはしていない。
 僕は、幾つかの作品を見ているが描かれた自画像は、醒めていて、触れればどちらも傷つくように孤独だ。

 「僕は絵が好きでね。絵が好きな僕が、当時の絵を見て結構面白いんとちがうかなと思うから、やっぱりいいんやと思う」と、いつもの哲荘さんである。あれから15年、飛鳥仏が懐かしいと言いながら作品を彫っておられる。
 僕らは、哲荘さんのことを、都合の良い時だけ教祖と呼んでいる。教義は「自分らしく自由に生きなさい」である。僕の段位は未だに9級練習である。
「最近は、生きていることが楽しくて仕方ないんや。わかるか……」と問われた。僕は、「わかりません。哲荘さんの歳になったらわかるかもしれませんが」と答えた。教祖は、飛鳥仏を抱きかかえて写真におさまった……。15年の歳月に感謝したい。
 かつて……、今もそうだが、哲荘さんの前では緊張が走る。全てを見透かされ、何を言っても真実を話せていない気持ちがしたものだ。今はそういう僕自身をちゃんと認めることができた上で、話すことができているような気がしている。
 あれから15年、哲荘さんの自画像を前に、傷つくことくらいできるかもしれない。

 

日時: 2012年7月28・29日 / 8月4・5・11・12・18・19・25・26日(土・日・祭日の10時〜16時)
ところ: 醒井木彫美術館 (滋賀県米原市醒井  TEL: 0749-54-0842)

日曜日の午後は在廊予定。

店舗等の情報は取材時のものですので、お訪ねになる前にご確認ください。

小太郎

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