龍神とトンネル

このエントリーをはてなブックマークに追加 地域: 彦根市 2012年5月3日更新

 今年は辰年、龍神について調べていたら、龍神とトンネルの話にいきあたった。
 東海道本線・米原~彦根間には、昭和31年(1956)11月19日に電化されるまで、短いトンネルがあった。仏生山(むしやま)トンネルという。現在のJR琵琶湖線より山側、滋賀県東北部浄化センターの敷地内を走っていた。当初、トンネルではなかったが、その後、わざわざ煉瓦を積んでトンネルにしたらしい。
 マニアの間では有名なトンネルらしく、『日本の鉄道ことはじめ』沢和哉著(1996年)「第2章鉄道建設うらばなし」で、「龍神が怒って運転を妨害 仏生山トンネルものがたり」として、紹介している。
   仏生山には、龍神が住んでいて、竹生島の弁才天のもとへ通う道筋となっていた。ところが、鉄道が仏生山の中央を切り通し、怒った龍神が、木や土砂を線路上に落下させて、鉄道の運行を妨害した。故に、わざわざ煉瓦を積んでトンネルにした。
 龍神は今も竹生島の弁才天のもとへ通うことができるわけである。木や土砂が線路上に落ちる現象を龍神の怒りとするところが、琵琶湖ならではの話である。
 そして、仏生山トンネルは今も存在している。しばらくすると緑に覆われ見えなくなってしまうだろうが、米原から彦根に向かう時、少し気をつけていると、JRの線路の向こう側に、美しい煉瓦のアーチが2つあることに気づく。
 実際にこのトンネルをリアルに経験した人も多いだろう。龍神が竹生島へ通う道の下を鉄道が走っていた……。その光景を想像し目を細める気分のいい春である。

小太郎

スポンサーリンク
関連キーワード