2011の夏を快適に過ごす
旨さの秘訣は乾燥にあり、ゆで具合には個性がある
夏、冷たい麺類がおいしい季節だ。
- たっぷりの湯をわかし完全に沸騰したら、麺をパラパラと入れる。再沸騰するまで蓋をし、蓋が持ち上がったら外す。(吹きこぼれに注意)
- 麺がふわっと回るくらいに湯の温度を保ちながら所定の時間ゆがく。(98℃の法則)
- 麺をあげ、冷水でぬめりがとれるまで洗う。(最後に氷水でしめるとなお良い)
乾麺を上手にゆがくコツを、八日市の本町商店街にある田中製麺所で教えていただいた。創業104年、滋賀で唯一、近畿には2軒しかない乾麺の製造卸、販売所である。昔ながらのうなぎの寝床と呼ばれる間口が狭く奥の深い造りのお店で、入り口が販売スペース、奥が製造所になっている。
うどん、きしめん、そうめん、中華そば、そばはモロヘイヤやよもぎ、茶そば……。パスタ以外の乾麺ならつくることができる。ご主人の田中松司さん(47)は4代目だ。
「乾麺製造での一番のポイントは乾燥です。打った麺を乾燥室に入れ、表面、中身を十分に乾かしていきます。この乾かし具合が麺の熟成度合いともいえます。天気の影響もあるし勘と経験の世界です」
麺の乾燥から裁断を見学させていただいた。天井に取り付けられた機械で2階に運ばれ、暗室のような乾燥場で熱と風を当て乾かされ、降りてくる。夏場は50度を超えるという。
乾麺と生麺の違いといえば、ゆでるには時間がかかるが、日持ちがいいという程度の印象しかなかったのだが、田中さんは意外なことを教えてくださった。
「乾麺は乾物の一種です。じゃこや干ししいたけなどと一緒で、乾かすことで旨みが凝縮されます。そばに関しては特にその特徴が際立っています。茶そばやよもぎそばは特にそう言えます」
乾麺はゆがき具合が難しい。油断すれば吹きこぼれるし、注意深くなればできあがりが固すぎる。冒頭のゆがき方を伝授してくださったのは、奥様の依里子さん(48)だ。
「乾麺を生かすも殺すもゆがき方次第。そして麺は太くなればなるほど、ゆがく人の個性が出ます。我が家でうどんをゆがくと誰がゆがいたかわかるんです。同じようにゆがいているのに、96歳のおばあちゃんのゆで方にはどうしてもかないません」
ここ最近、私は、連日のようにそば、そうめんをゆがき、湯の中で麺が回るのをじっと見つめている。乾麺は、決して手っ取り早い食べ物ではないことを知る。そして、うどんに限ってはかまあげがおすすめと聞いている。うどんに挑戦できる日は何時のことやら……。法則だけでは満たされない世界がここにもある。
田中製麺所
滋賀県東近江市八日市本町6-15 / TEL: 0748-22-0366
営業時間 9:00〜17:00 / 定休日 日曜・祝日
そうめん・ひやむぎ・きしめん・うどん各110円、中華そば125円、そば・よもぎそば120円、モロヘイヤそば220円、茶そば280円など(すべて1袋250g・よもぎそばは200g)、ケースでの購入は割引あり
店舗等の情報は取材時のものですので、お訪ねになる前にご確認ください。
【椰子】