50年前から、50年後へ……。

元祖法然上人八百年大遠忌法要

このエントリーをはてなブックマークに追加 地域: 彦根市 2011年3月30日更新

法然上人の木像を台座に載せ練り歩く

 2011年3月13日。春の到来を思わせる暖かな日差しに守られながら、彦根市南三ツ谷町の常光寺では「元祖法然上人八百年大遠忌法要」が営まれていた。以前の記事「年貢を納める」以来のご縁だった。
 浄土宗の開祖・法然上人の大遠忌法要は50年ごとに、総本山の知恩院、各地の浄土宗寺院でそれぞれに営まれる。今年は八百回忌の節目にあたり、常光寺では3年前から実行委員会が組織され準備が進められてきた。
 午前中の法要に続き、午後1時過ぎから、「練供養」が始まった。「本山からお越しいただいた」という法然上人の木像「御分身」を台座に載せ、近隣の浄土宗寺院と町内の寺など16ヶ寺の僧侶と、檀家の代表、稚児に扮した子どもたちの行列となる。「練り宿」といわれる檀家の家を出発し、常光寺までを歩く……。寺に到着した御分身は本堂内陣にまつられる。
 行列は、静かな集落の細い路地をゆっくりと進んでいった。お稚児さんたちは、おごそかな雰囲気を崩さないように一生懸命なのが伝わる。お稚児さんのそばには親がつき、そのほかの檀家は後ろを歩く。まちの人は道路の脇で行列を見守っていた。手を合わすお年寄りがいる。常光寺の檀家は町内の約半分だ。宗派を超えた人々の信心深さが印象的だった。

 「法要を行うことが、いわゆる通過儀礼になってしまわないよう、町内の人々の心に記憶と記録をつないでいきたい」。実行委員長の田附源太郎さん(70)の思いだ。当日ふるまう食事はすべて手作りし、法要の前の晩は夜警に出る。檀家それぞれが分担をもち責任をもつようにした。記憶を皆が持ち続けてほしいという願いをこめてのことだった。
 「夜警には、ふだんお寺に来ないような若い人たちも来てくれ、打ち解けて話す機会になりました。このたびの法要で、浄土宗のメッセージ『共生(ともいき)』という言葉を思いました。私たち人間は、知らない者同士とも、そして過去・未来ともつながっているということです」。ご住職の上田孝俊さん(56)が教えてくださった。
 大遠忌法要は、人生の確かな記憶のあるうち1度、運が良ければ2度立ち会えるかである。750回忌のとき、高校2年生だった田附さんは手伝い役として奔走したという。
 50年前から、そして、50年後へ。
 小さなお稚児さんたちは、この暖かな春の日のことを、きっと覚えていてくれるだろう。少しでも寒さが和らぎますように、と日本中の人々が祈った ことを振り返ってくれるだろう。小さな彼らとっては、遠く離れた地の人々のために。
 過去も、未来も、そして知らない人たちとも、私たちはつながっている。50年後へとつながっていく。

 

延命山地蔵院 常光寺

滋賀県彦根市南三ツ谷町1870
TEL: 0749-43-3747

店舗等の情報は取材時のものですので、お訪ねになる前にご確認ください。

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