日本の風景 オコナイ

長浜市木之本町

このエントリーをはてなブックマークに追加 地域: 木之本町 2011年3月9日更新

木之本町の田神山観音寺のオコナイ

 「オコナイ」は今となっては不思議な儀式である。少し前までは当たり前に行われていた祭礼で、不思議と感じるのは何かしらの失ってしまった欠片の多くがあることを、感じることができるからだろう。
 「オコナイ」とは、『村内の豊作と安全を祈願し、一月から三月にかけて繰り広げられる祭りのことである。西日本で広範囲に執り行われており、島根半島の北部ではオコニャと呼び、同様の行事は有明海沿岸の村でも行われている。しかし、これほど高密度にオコナイと呼ばれる行事が村々で営まれている地域は、滋賀県をおいてほかにない。とりわけ、琵琶湖の北部にあたる湖北地域と、湖から離れた内陸部の甲賀地域において盛んである。しかしながら、その由来や変遷を辿ることは現在では困難になっている。』(オコナイ 湖国・祭りのかたち / INAXBOOKLET / 2008
 2011年2月20日、商店街のイベントの準備で出発が遅れたが、木之本町の田神山観音寺のオコナイにどうにか間に合った。

 湖北のオコナイの基本は、鏡餅をつくり神仏に供え、直会(なおらい)をし、トウヤ(当屋、頭屋)・トウヤド(塔宿)と呼ばれる村の代表者がオコナイの祭祀権を次のトウヤ・トウヤドに渡す。しかし、その過程(儀式)は村々によって様々であり、何なんだ!というくらいに不思議である。
 田神山観音寺のオコナイは、トウヤドに「塔宿」の字をあてる。区内十四町内会の班がオコナイを順に担当し、今年は中神領から東神領へ塔渡しが行われた。午前中、観音堂に中神領の人々が入り祭礼を行い、午後東神領が入る。観音堂内には鏡餅が供えられ造花で荘厳(しょうごん)されている。造花は、菖蒲、百合、菊……。百合には観音様の分身が移られ、塔宿で一年間お祭りをするのだという。「荘厳」というのは、仏像や仏堂を美しくおごそかに飾ることをいう。
 塔渡しが終わると、観音堂から、鉦・太鼓、菖蒲・百合・神号軸・御鏡餅・菊の順番で、本年の東神領の塔宿まで行列が行われた……。

 過去に何度か湖北や甲賀のオコナイを取材させていただいたことがある。「どうしてですか、何故ですか」という疑問に対しての答えはいつも「昔からこうしているから、何時の頃からかは解りませんが……」。村内の決まり事である祭礼を、そのまま継承する。何故かという理由はそこには必要が無い。田神山観音寺のオコナイも同じだ。何かをするに当たり、或いは、何かを頼むに当たり、細かに理由を求められ、その効果まで問われる現代に慣らされた世界からは理解し難いものかもしれない。
 毎年、何処かのオコナイに居合わす幸運を得ている。その営みの風景を目にすると、トウヤ・トウヤドのご苦労や関わる人々のご苦労を余所に、淡海っていいなぁと改めて思うのである。

 勝手に押しかけたにも関わらず、堂内にも同席させていただき、ありがとうございました。

小太郎

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