年賀状に江と面白の島の景色や竹生島

このエントリーをはてなブックマークに追加 地域: 長浜市 2010年12月28日更新

日本の伝統的文様「波兎」

 竹生島には、日本三大弁才天を本尊とする宝厳寺、弁才天に加え龍神など四柱の神を祀る都久夫須麻(竹生島)神社がある。竹生島への信仰は、平安期から中世にかけて盛んで、名だたる戦国大名も島に対し手厚い保護をしていたという。その歴史的背景や琵琶湖に浮かぶ島という神秘性からか、滋賀県のパワースポットとしても注目を浴びている。そして2011年は、浅井三姉妹の大河ドラマで竹生島も注目を集めそうである。実は浅井一族は厚く竹生島を信仰をした戦国大名なのである。
 竹生島の宝厳寺には、浅井長政の父・久政が蓮華会の頭役として納めた弁才天像が安置されている。浅井三姉妹も、参拝に訪れたことだろう。蓮華会とは、家で祀った弁才天を島に奉納する行事で、現在も受け継がれている。今年は8月15日に行われた。
 ところで、能の謡曲『竹生島』に次のような一節がある。
「緑樹影沈んで 魚木に登る気色あり 月海上に浮かんでは 兎も波を奔(はし)るか 面白の島の景色や」(「奔る」は勢いよく動き回ること)
 島の木々が湖面に影をつくるようす、またその影を縫って泳ぐ魚達が木を登っているようだ、そしてその美しい景色に月に住む兎も、波間を駆け出していくだろう、それほど竹生島の景色は趣がある、となるのだろうか……。神秘的で美しい情景だ。
 ちなみに、家紋や焼き物の図柄で親しまれる日本の伝統的文様「波兎」は、「竹生島文様」という名を持っている。湖面に映る月、その周りに兎が湖上を奔る謡曲『竹生島』に由来するのだろう。
 2011年は兎年。年賀状に謡曲の一節を添え、「竹生島文様」を描くのも素敵ではないだろうか。
 毎年特に信仰など意識せず、有名どころの神社に赴き、人にもまれながら参拝している。来年のお正月は、琵琶湖に浮かぶ島で2011年の安寧を祈願しにいこうか。浅井家縁の弁才天、兎も波を奔る美しい竹生島の景色を、元旦から味わえるとはなんと面白の景色ではないか。
 謡曲「竹生島」は醍醐天皇の時代の物語。江もきっと知っていたに違いない。

滋賀県立大学人間文化学部地域文化学科
高木 唯

竹生島へのアクセス

びわ湖観光船オーミマリン TEL: 0749-22-0619
琵琶湖汽船 長浜支社 TEL: 0749-62-3390

彦根港 往復  大人3,300円 小人1,650円  
長浜港 往復  大人2,980円 小人1,500円
*竹生島では400円の入島料が必要になります。

店舗等の情報は取材時のものですので、お訪ねになる前にご確認ください。

編集部

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