直弼との心の旅

このエントリーをはてなブックマークに追加 地域: 彦根市 2009年11月19日更新

井伊直弼と黒船物語

 映画や小説のなかの登場人物と、自分を置き換えてみる経験は誰にもある。例えば、恋に悩む主人公と自分の境遇をたぶらせて、ついつい過度な感情移入をしてしまったり……。
 埋木舎時代の井伊直弼に自らの姿を重ねた人がいる。横浜在住の豊島昭彦さんという方である。大手銀行員である豊島さんは、会社の組織編制の都合もあり昇進の道は険しかった。そんなときに、本当にたまたまのことである。埋木舎を訪ねた。
 埋木舎は、若き日の直弼が15年暮らした場所である。直弼は14男であるために藩主になれる可能性はほとんどなく、他家への養子縁組も叶わずにいた。それでも「なすべきこと」として学問、武道に精進し、藩主そして大老への道を歩んでいった。
 豊島さんにとってそれまで幕末の大老というイメージでしかなかった直弼が、決してあきらめないことを教えてくれた。ここから豊島さん独自の、直弼の足跡をたどる日が始まるのである。
 「井伊直弼と黒船物語」は先日豊島さんが出版した、直弼の史跡を案内する本である。龍潭寺、天寧寺などをはじめとする「彦根篇」に始まり、「江戸篇」、そして直弼の恋人といわれた村山たか女ゆかりの金福寺を紹介した「京都篇」、さらに直弼が決断した開国にあたっての外交史「黒船物語」が収められている。それぞれの地で、豊島さんは考え、直弼が思っていたこと、しようとしていたことを想像している。
 秋の夜長、豊島さんに連れられ旅した気分になる一冊である。

井伊直弼と黒船物語

—幕末・黎明の光芒を歩く—

豊島昭彦著 サンライズ出版 1,680円
大手書店等で販売中

店舗等の情報は取材時のものですので、お訪ねになる前にご確認ください。

編集部

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