「いかつぶ」と「宇宙」

　上田三佳さんは美大を卒業し仕事をもつ傍ら、絵を描いたり糸や綿布など身近な素材で、移りゆく季節やその時々の自分自身の気持ちを映すように作品を作ってきた人だ。近々、久しぶりに個展を開催するという。
　「いかつぶ展」……
これが個展のタイトルだ。「いかつぶ」の「いか」は、海に棲むあのイカであり、イカが今回の個展のテーマなのである。展示会場には布製のイカや、イカをモチーフにアクリルやクレヨンで描いた作品が並ぶ予定だ。イカと上田さんとの関わりが気になった。
　「もともと私は丸やつぶつぶした点を描くのが好きだったんです。どれだけ描いても同じ丸や点はできないし、飽きることがないんですね。私たちも、この地球上に存在するものも原子という点の集まりであり、宇宙の始まりも点であったはず……」。
　そんな風に考えていた時に、イカには模様があることに気づいたのだという。
　「イカをよく見ると胴の部分につぶつぶ模様があり、その模様が輪になっています。新鮮なイカの場合は、つぶつぶ模様が点滅しています。彼方の宇宙と私は点からはじまるという部分で同じであり、またイカにも点の集まりがあったんです」。

　上田さんが点について思いをめぐらし、作品にするようになったのは、昨年、女の子を出産したことが大いに関係しているのではないかと思う。
　ふと見ると、お子さんの眠る布団の上の方で、布のイカたちが風に揺れていた。上田さんが制作したものだ。お子さんのお気に入りなのだという。ふたつの銀河が重なっている。
　個展では、私という点から宇宙へ……、「いかつぶ」から、どんな宇宙が見えるのか、楽しんでみてはどうだろう。

【椰子】